第35話

そんな優しい人がほとんどで悪い人が稀な業界を基本的には信用していた私たちにとって、今日の奇襲は青天の霹靂だった。



今日のプレスさんは、和泉くんが滅多に引き受けないことを知っていながらも、訪問したのだ。確信犯だ。

こういうメーカーさんが今までいなかったので、全員油断していた。


誰も知らない、奇襲だった。



私たちがスタジオに入った際も、「まだメーカーさん来てないの」と言ってきたので、私はまずいと思った。でも、その時には既に遅かったのだ。彼女たちは、私たちがスタジオ入りする時間を、把握していたらしい。



しかも同行者として、メーカーさん側が共演を望んでいる、女性モデルを連れてきた。


当然、これも下着メーカーさん側の奇襲の一つだ。




「はじめまして、和泉さん」



……その女性モデルは、私が絶対和泉くんと仕事させたくない、と思う相手ーー。



椎名宇海。


有馬くんが以前、CMで共演した、あの和泉くん狙いの女性モデルだった。

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