第33話

「ーーで、どうしたの。菜奈ちゃんとなんかあったでしょ」


「……なんで浅葱さんだって思うんだよ」



俺、何も言ってないのに。



志筑はガラス製のローテーブルにアイスコーヒーとミルクティーがそれぞれ入ったグラスを置く。


ミルクティーが飲み物の中で一番好きだと言っている志筑は、コーヒーを飲まない。……でも、こうして時折訪れる俺のために、コーヒーを買っていてくれる。優しい親友だと思う。



……妙なところで鋭いのがちょっと怖かったりするけれど。




「だって、最近来る時って大体浅葱さんの話しに来ているようなもんじゃん」



……確かに、言われてみればそうだ。


最近の俺は、なにかと志筑の家に来ていた。しかも、休日になると必ず、だ。

それまでは、月に一回程度の周期だったのに。


数日前に来たというのに今日も来てしまったのだから、ちょっと俺は浅葱さんのことで悩みすぎだと思う。



……いや、浅葱さんを気にしすぎなのだろうか?




「…………」


「ほら、早く話しなよって」



興味津々で爛々と輝く目をした志筑に、俺はため息をついて話し始めた。





「……浅葱さんといると、恋愛もいいなーって思うんだ」



汚く思っていた、恋愛を。

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