第31話
和泉くんは、不機嫌そうに眉を寄せ、珍しく腕を組み壁にもたれ、無言でいる。
二人っきりで無言のエレベーターは辛い。
「……黙っていたこと、ごめんね。でも、和泉くんの担当なのは変わらないから、」
だから、安心して。
そう言うと、和泉くんは途端に表情を緩ませた。あ、腕組みも解けた。
「……変わらない、んだ」
「うん。だから、私の勝手な興味からで」
「……っていうか、俺に似てるってこと?」
「確かに、オーラが似てる気がする。……性格は、まだわからないけど」
でも、あくまでも和泉くんあっての顔合わせだからね、と念を押せば、和泉くんは納得したかのように、「そっか」と柔らかく笑った。
……だから、やめてよ。
そんな表情を見たら、自分が特別みたいで困る。
……まあ、確かにマネージャーとして和泉くんの担当をしているから特別といえば特別なのだけれど。
インタビューには私がいなきゃダメだとか。私が担当を外れるかもしれないって思って不機嫌になったり、変わらないことを告げればほっとした表情をしたり。
今まで一緒にいたから、担当が変わるのが不安で、また杞憂が働いたのかもしれない。
だから、和泉くんにとっては何気ない一言なはずで。
わかってる、けれど。
……私がそれで、勘違いをしてしまう。
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