第30話

「…………ねぇ、新人くんって、誰?」


「え、」




あ、そういえば話していなかった。


明日会う新人モデルの子は、学年的に私と和泉くんの後輩。そして、モデル歴としては、和泉くんの2年後輩。



オーディション的に言うと、一期違いになる。オーディションは2年一度なのだ。




「……なんで、浅葱さんと会うの?」


「えっ、あ、私が単に気になって……。本当だったら会わなくてもいいんだけど、編集長も会っておいて損はないーって」



それに、和泉くんのようなセンスがあるって、言ってたから。



そう言うと、和泉くんはふいっと顔を背け、「あっそ」と素っ気なく言い放ち、すたすたと歩いて行ってしまった。




……和泉くん、もしかしてなんか、怒ってる?


初めて見る和泉くんの一面に、戸惑っていると、和泉くんがエレベーターに乗り込んでしまったので、慌ててそのあとを追った。



拗ねたり、少し怒ってるところは見たことはある。でも、こういう怒り方は見たことがなかった。




「……和泉くん、なんか、私ダメなこと言った……?」


「……べつに」



なにこの人!!


明らかに不機嫌だし、眉がずっと寄ってる。なに、どういうこと。

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