第29話

インタビュー記事の原稿確認を終え、編集部をあとにしようとしたその時。


表紙のデザインを担当している早見さんと会った。


早見さんは茶髪のショートヘアがよく似合う、スレンダー美人だ。先月結婚した彼女の薬指には、指輪が光っている。




「早見さん、明日はお願いします」


「おー、浅葱ちゃんと和泉くんだ!うん、よろしく!それに、明日はあの新人くんとの顔合わせだってね?」


「そうなんです。だから、ちょっと緊張してます」


「……まあ、あの子は緊張しないほうがいいかな」


「……?」



どういう意味だろう。




「あ、じゃあまた明日ね!」


「はい、よろしくお願いします」



緊張しないほうがいい、か。明るい人なのかな、雑誌で見た時は、クールな感じがしたけれど。


……いや、でも。イメージは和泉くんで一度壊れているので、なにも考えないで行こう。




「……和泉くん?」



先程からなにも喋らないと思って隣に視線を向けると、彼は無表情で立ち尽くしていた。

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