第28話

インタビューを読み終えると、和泉くんはため息を吐いた。


またやってしまった、と呟く彼に、「杞憂だったでしょ」と追い打ちをかける。



「和泉くん、そんなに不安がらなくて全然大丈夫だからね」



堀田さんは、柔らかく笑う。彼と和泉くんは、和泉くんが新人モデルだった頃からの付き合いだ。


インタビューの時は必ず堀田さんに任せている。


一番最初のインタビュー依頼の際、和泉くんからの要望で「絶対男にして」と言われていたから、堀田さんにした。それは間違っていなかったみたいだ。





「ついでと言ったらアレだけど、撮影ページも見てみてよ」


「……はい」



怖気付く和泉くんの横から、原稿を覗く。


……全然、心配なんかしなくても、かっこいいのに。


そう言ってみようかと思ったけれど、私は口をつぐんだ。




「……どう?悪くないでしょ、和泉くんって」


「…………まあまあ」


「自分の顔にまあまあっていうモデル初めて見た」



堀田さんと顔を合わせて笑う。


和泉くんは、その意味をよくわかっていなかったらしく、首を傾げていた。





和泉くんはスカウトからのオーディションだった。


だから、彼は自分の顔をかっこいいと思って応募したわけでもないし、周りの人に勧められて受けたらしい。認めてない、というより「そうなの?」と人から言われて気づく、無自覚イケメンだ。



「俺が一番人気モデルってあり得ない。イケメンの基準ってどうなってるの?」


なんて言っていたぐらいだ。


それに対して有馬くんが、「コウの顔面とその性格のギャップには未だについていけないし、笑える」と言っていたのが、今でも時折思い出しては笑ってしまう。確かにその通りだ。最初の頃はある種の詐欺かと思った。

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