第26話

気にしないで、と言われた手前で言うのはあれかな、と思った。


けれど、なんだか誰かに話したい気持ちもあったので、思い切って言うことにした。




「……和泉くんに、キスされました」


「……それはまた、」



いきなりだね、と折木は苦笑い。


ーー本当に、いきなりの出来事だったな、と少し振り返る。けど、すぐに恥ずかしくなってきたのでやめた。




「で、さっきなに話したの」


「……き、気にしなくていいから、って」


「……最低すぎか」



確かに……。


まあ、最低、という言葉で片付けるのもあれな気がする。




「……ちなみに頭痛って仮病でしょ、怪しまれないための」


「……その通りです」



もう少ししたら戻ってくるよ、と言えば、折木は「まあ、なんかあったら話は聞くから」と言ってくれた。




「コンサート、一緒に行ってくれるなら、ね」


「……行きますよ」



折木が好きな咲坂以外に、私のタイプのアイドルがいる。


そのアイドルを見に行くと思えば、容易い御用だ。

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