第23話

「そんなに慌てなくても……珍しい、菜奈が慌てるなんて」



いつもは和泉追いかけていきいきとした感じなのに、と付け足され、ぎくっとなる。



「っていうか、キスでそんな慌てる?」


「慌てるよ!!そりゃあ、」



はっと気付き、口を閉じた。危ない、言うところだった。


折木のことだから、言ってしまったら根掘り葉掘り聞かれる。そんなのは恥ずかしいし、和泉くんとちょっと気まずくなる。



頑なに言おうとしない私に焦れったい、と折木が眉を寄せ、「好きなやつからのキスなのか、それとも思わぬ相手からのキスだったのか」と呟き、顔が赤くなったり、青くなったりした。



そんな私に、折木が畳み掛ける。




「あ、もしかしてこのクラスにいたりするわけ?」



そう言われた瞬間、突然後ろから首に腕を回され、引き寄せられた。

ふわり、と香った柔軟剤の優しい香りと、折木が口を開けているのを見て、なんとなく察した。




「浅葱さん、ちょっと話があるんだけど」




今、一番、会いたくない相手からの聞きたくない言葉だった。

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