第15話

撮影が終わると、インタビューまで30分ほどの空き時間が訪れる。

依然として、周りのスタッフさんたちが和泉くんに心配そうな視線を向けているが、誰も声をかけない。

その視線を無視しているか、目に入っていないのか。


私はスマホを無表情でいじっている和泉くんに歩み寄った。



「和泉くん、ちょっといいかな」

「……何ですか?」


ーー自分は用なんてなにもありませんよ、とでも言いたげな、無関心を装おうとする無表情がとても気に食わない。



「…………なんでそんなつまらなそうなの」


服の裾を握りしめながら、私は怒気を含んだ声でそう言う。和泉くんは少し驚いた表情で私を見た。




「どうしたんですか、そんな怒って。珍しい」

「珍しく和泉くんがヘタレじゃなくて面倒くさくないけど、代わりに無表情過ぎて扱いづらくてイライラしてんの」

「…………」


扱いづらい。和泉くんって、いつも扱いづらい。


繰り返しそう言えば、和泉くんの眉間にシワが寄る。

その表情を見て、やっと人間らしくなった、と思う。



「……俺だって、あんたのこと扱いづらい」


和泉くんは顔を背けて不機嫌そうに言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る