第14話
そうしているうちに撮影が始まった。
いつも通り、カメラマンの神井さんが和泉くんにポーズ指示をする。
それに対して、和泉くんはいつもと違って「はい」と答えるだけ。いつもなら、溌剌とした声で「わかりました!」と答えた後、表情を切り替えてポージングする。
その切り替えの時が、私にとって彼が格好良く映る唯一の瞬間だった。
今日はなんだか、違う。
「和泉くーん、後ろ向いてこっちに視線くれないかな」
「はい」
「……そうそう。そういう感じー、いいねー!」
神井さんも少しやりづらそうに見える。珍しい。
和泉くんの調子が狂うと、みんなの調子が狂う。この場にいる全員がそうだと分かった。
レフ板を持つアシスタントの緑家さんも、ヘアメイクの牧田さんも、このページを担当している編集者の堀田さんも。
みんな、和泉くんのことが心配なようだ。
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