第13話


スタジオに入ると、編集者さんやカメラマンさんが「浅葱ちゃん!身体のほうは大丈夫ー?」だとか「和泉くんもっと明るい表情して!」と笑いかけてくれた。


私はそれに笑って返したけれど、和泉くんは何も答えず、黒色のリュックを簡易テーブルに置いて座ってしまった。珍しく態度が明らかに悪い。



別の島には有馬くんが座っており、紙パックのフルーツティーを飲んでニコニコとこちらを見ていた。


「菜奈ちゃん、おっはー」


「おっはー……です……」


異変を察知したのか、有馬くんは私のほうに椅子を近付け、声を潜めて話し始めた。



「コウはなんなの、あれ」


「昨日の感じがずるずる続いてる感じです」


「……面倒くさそう」


「おっしゃるとおりです」


あんなのどうやって扱えばいいんだか分かりません。


有馬くんからすれば他人事だ。おもちゃで楽しんでる子供みたいに笑っている。薄情者め。


有馬くんが和泉くんを小馬鹿にするようなことを言った時はいつも必ず、和泉くんが横からつっこんでくるのだが、今はそんな感じがない。スマホ何かを見ているようだった。

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