第9話

ーー聞き覚えのある声が微かに耳に入る。


硬い感触を背中に感じ、徐々に意識が鮮明になっていく。ベッドではない。それに外も少し騒がしい。


瞼を開き、重たい身体を起こす。



「菜奈、起きた?」


「……え、お母さん」


「よかった……」



目の前には、涙目のお母さんと和泉くん。そして何故か有馬くんが座っていた。



「和泉くんがね、具合悪そうな菜奈を見つけて私たちに連絡してくれたの」


お母さんがちらり、と和泉くんに目線を向けて言う。



「……ごめんなさい、和泉くん。迷惑かけました」


「…………いや、別に」



その言葉を聞いて、それまで眉を八の字に寄せて私を見ていた有馬くんが、無表情の和泉くんに視線を移す。


……和泉くん、機嫌悪い? 調子悪いのかな。


「和泉くんが連絡して有馬くんが来てくれたのよ」


「……有馬くん、ごめんね」


「いやいや、全然。コウが勝手に呼んだだけだから」


そもそも、なんで和泉くんは有馬くんを呼んだのだろうか。

一人だと不安だった、とか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る