第3話
「……ただ単にモデルの和泉コウが好きなんです。仕事受けてください。」
「ごめんね、俺褒められるの慣れてないから。期待とかしないでね?」
何を言ってるんだこのタコ。
「受けなかったらまた今度の撮影でパリまで行ってもらいますけど」
「………受けます」
「来週の木曜日。お願いします」
「……はい」
彼は飛行機が苦手である。いや、乗ったこともないのだけれど。
陸から浮くのが嫌だという。
私は撮影の見学を兼ねてお母さんにロンドンへ連れて行ってもらったことがあり、それがすごく楽しかった。以前、説得するためにそのことを述べたところ、「俺とあんたは違う」と一刀両断された。そうですけども。
「和泉、また撮影?」
「……うん、そうみたい」
「和泉、雑誌買ってるよー!」
「……よ、読まなくていいよ」
「和泉の着ていた服、この間買ったぞ!」
「……マジか」
私が廊下に出て電話をしようとすると、教室でそんな会話がきこえる。
なんだかんだ言って、好印象を持たれやすい彼がモデルをしているということは、周知のことであり。
彼のファンは校内にも多く、サインや写真を求めて教室や玄関で待っている女の子もいたりする。
勿論、彼は全部断っているが諦めないで押しかけてくる女子が多いので、クラスメート総出で和泉くんを守ることも珍しくは無い。過保護すぎるぜ。
ちなみに、うちのクラスで和泉くんに好意を持っている女の子はいない。
女子曰く、「一緒にいたら気疲れしそう」。
まあ確かに、二つの意味で疲れそうではある。
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