第2話
「俺、絶対変なこと言ってるでしょ!?」
彼は見る勇気がないらしく、校正前は勿論、校了後の紙面を一度も目を通さない。インタビュー当時の自分の醜態を思い出して三日三晩引きずるらしい。重すぎる。
私は彼のページを毎回チェックするが、全然問題ない。
(編集者さんの丁寧な誌面作りのおかげもあり)むしろ完璧だというのに、彼は「そんなの社交辞令でしょ、無理、そういうベタ褒めなの俺無理だから」と素直な感想をはねのけてしまう。ベタ褒めなの俺無理だから。じゃないんだよ、話を聞けタコ。
昼休みが始まってすぐに席を立ち、彼にインタビューの依頼をして数十分。
お互いに昼食を取らずに走り続けてきたため、もう埒があかないと感じ、私は彼の右腕を掴んだ。
途端、彼の足が止まり、私は彼の華奢な背中へと吸い込まれる。
勢いよく鼻の頭をぶつけた私に和泉くんが振り返った。
「ごめん、あのだいじょ、」
「……謝らなくていいからインタビュー受けて」
「……すごいね浅葱さん、本当にガッツがあるというか……」
「受けてくれますか」
「……粘るね……」
「だって和泉くんのマネージャーみたいなものを任されてしまっているので」
「編集長の娘な上、同じ学校ときたら俺はどう逃げ回ればいいんだっていうね……」
そう。私のお母さんはメンズ向け雑誌「amber」の編集長である。
和泉くんは、「amber」専属モデルなのである。
雑誌の中で一番人気があるというのに、彼は、専属モデルの中で一番自分に自信がない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます