第5話(前編)……潮路を拓く

『忘れられた皇子』(第十二章第5話)【登場人物・人物相関図】です。

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『忘れられた皇子』(第十二章第5話)【作品概要・地図がメイン】です。

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前書き


 江華島カンファ・ド礼成港イェソンガンが高麗の海と陸を結ぶ動脈となった時代。北宋の商才李承業リ・チョンイェは、その潮流に己の未来を託し、義母張美和チャン・ミファの屋敷へと足を踏み入れる。本編では、彼が家族の輪へ溶け込みながら交易拠点確立の布石を打つ一日目の出来事を描く。


本文


李承業リ・チョンイェ江華島カンファ・ド及び礼成港イェソンガンを拠点とする海外交易を始める②


□義母張美和チャン・ミファからの指示と李承業リ・チョンイェの役割「10月25日午後5時」

法事の初日を無事に終えた李承業リ・チョンイェは、義母張美和チャン・ミファに呼ばれ、2日目と3日目に向けた段取りの説明を受けた。


承業チョンイェ様、初日のご挨拶は本当に素晴らしいものでした。皆さんがあなたの誠実さに感銘を受けています。明日以降も、心を込めた行動をお願いしますね」と、彼女は落ち着いた口調で語った。


李承業リ・チョンイェは、張美和チャン・ミファの身近で彼女の若々しい容姿とがっちりした身体と生々しい息遣いを感じながら、ふとこう思った。


(60代の前半と聞いていたが、40代の前半にしか見えない。そう言えば、義理の姉の金恵蘭キム・ヘランさんも確か40歳と聞いていたが、30歳位にしか見えない。何か若返る秘訣でもあるのだろうか?)


李承業リ・チョンイェの一物(いちもつ)は久し振りに本来の姿を取り戻してきたようだ。


義母張美和チャン・ミファ


承業チョンイェ様、何を考えていらっしゃるの。ああ、わたしたち、カン家の女性の年齢のことを不思議に思っているのでしょう?」


李承業リ・チョンイェ


「そうなんですよ。大奥様も若奥様も素晴らしくお若くていらっしゃるので、何か特別な秘訣でもお持ちなのかなと思いましてね」


義母張美和チャン・ミファ


「私達は、毎日、高価な高麗人参を食べているので少々若くなっても当たり前なんですよ」


李承業リ・チョンイェ


「なるほど。それで合点がいきました。私等、大奥様のお姿を拝見するだけで胸が震えてしまいます」


張美和チャン・ミファは、李承業リ・チョンイェの下腹部が大きく膨らんでおり、彼の息遣いが荒くなっているのを感じ、思わず顔が赤らみました。


張美和チャン・ミファは、目の前に立つ李承業リ・チョンイェを改めて見つめ、その堂々たる風格と魅力に圧倒された。黒を基調としたシンプルながら洗練された装いは、彼の高身長と筋肉質な体型を際立たせており、シルバーのアクセサリーが加わることで、強さと繊細さが絶妙に融合している。


特にその端正な顔立ちは、まるで彫刻のように整っており、凛とした表情にはどこか威厳すら感じられる。彼が纏う雰囲気は、単なる外見の美しさだけではなく、内面から滲み出る自信と品格が際立っているのだ。


張美和チャン・ミファは、その若々しいたくましさに目を奪われると同時に、彼の立ち振る舞いが放つ穏やかさと優雅さに心を動かされた。息子や嫁から聞いていた武勇伝が現実味を帯び、彼がただの強者ではなく、知性とセンスを兼ね備えた存在であることを強く実感した。


「彼のような人物が家族に加わるということが、どれほど誇らしいか」と思いながらも、彼に対する淡い憧れが次第に芽生えていくのを、張美和チャン・ミファは自分でも止められなかったのである。その洗練された姿と誠実さを兼ね備えた魅力は、彼女の胸中に新たな感情を引き起こしていた。


ふたりはどちらからともなく、固く抱き合い、熱いキスを交わしていた。4,5分もキスを重ねていたふたりは、抱擁を解いた。張美和チャン・ミファは、初対面のときから考えていたことをこの場で打ち明けた。


義母張美和チャン・ミファ


「私は、高麗コリョの王族なのです。初代高麗コリョ王である太祖の末の娘です」


「私は貴方が気に入りました。養子にしたいのです。受けて下さい」


李承業リ・チョンイェ


「願ってもない良縁です。お受けしたいのですが、ひとつだけお願いがあります」


義母張美和チャン・ミファ


「どのようなことですか?」


李承業リ・チョンイェは、


「こういった行為を許して下さい」


と言いながら、張美和チャン・ミファを強く抱きしめ、熱烈なキスを仕掛けた。


たちが夕食の準備を始める声が聞こえるまで、ふたりは抱き合って離れなかった。


★初日: 夕食の準備を手伝う

初日の夕方、李承業リ・チョンイェは義母の提案で夕食の準備を手伝うことになった。調理場でたちと共に野菜を切り分けたり、炭火で肉を焼き上げたりと積極的に作業に加わった。彼は義母や義理の姉金恵蘭キム・ヘランから料理の指導を受けながら、その場で調理の技術を習得していった。


その夜、振る舞われた夕食は非常に好評で、村人や親戚たちは彼が手伝った料理を賞賛した。義母張美和チャン・ミファは、「承業様がここまでお手伝いくださるとは思いませんでした」と感謝を述べ、義理の姉も「本当に器用で驚きました」と微笑んだ。


後書き

 前編では、李承業が高麗社会へ本格的に入り込む第一歩を示した。交易の胎動と家族の温もりを並置することで、彼の野心が単なる利潤追求に留まらぬことを強調した。読者諸兄は、潮風の匂いと台所に立つ彼の気配を感じ取れただろうか。

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