第4話(後編)……祭祀の午後──挨拶、絆、そして嫉妬

『忘れられた皇子』(第十二章第4話)【登場人物・人物相関図】です。

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『忘れられた皇子』(第十二章第4話)【作品概要・地図がメイン】です。

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前書き

花山村にて、法事が厳かに始まる。李承業は儀式の場で誠実な弁舌を披露し、親族や村人たちの信頼を一身に集める。

だが、その輝きの陰で、女たちの思惑や嫉妬もまた新たな物語を生み出していた――。


★次の日の段取りについて


「2日目と3日目については、その日の朝にまた説明してあげるから心配しないで。今日は1日目のことに集中してね。大事なのは、貴方が変に目立たないようにして、でも礼儀正しく振る舞うこと。分かった?」


李承業リ・チョンイェは軽くため息をつきながら「分かったよ。そこまで言うなら、しっかりやるさ」と応じた。姜允雅カン・ユンアは「その調子よ」と満足げに微笑み、彼の服の袖を引きながら「さ、もうすぐ始まるから準備して」と促した。


★二人の関係を感じさせる軽さ


説明の中には冗談や軽い叱咤も混じり、二人の親密な関係が垣間見える会話だった。姜允雅カン・ユンアの言葉には緊張感をほぐそうとする思いやりがあり、李承業リ・チョンイェも彼女の話を理解して真剣に受け止めていた。


★法事での挨拶とその後の様子


法事が始まり、最初に村長である姜俊国カン・ジュングクが挨拶を行った。彼は儀礼的な形式に則り、穏やかな声で語りかけた。


姜俊国カン・ジュングクの挨拶

「本日はこのように皆様が集まり、私たちの祖先を共に敬ってくださることを大変嬉しく思います。私たちは先祖が残してくれた土地や知恵に感謝し、その恩に報いるべく努力してまいりました。これからの世代もその心を忘れることなく、共に繁栄していきたいと願っています」


挨拶は無難ではあったが、やや型通りで単調な印象を与えた。


李承業リ・チョンイェの挨拶

続いて李承業リ・チョンイェが立ち上がり、一礼してから落ち着いた口調で語り始めた。


「本日、このような貴い場に参加させていただけたことを光栄に思います。祖先を敬うこの儀式が、家族や村全体を繋ぐ絆の象徴であると感じています。私たちは過去から学び、その教えを未来に繋いでいく使命があります。どうかこの法事を通じ、祖先の思いに応えると同時に、皆様との絆を深める機会にさせていただければ幸いです」


彼の言葉は簡潔でありながらも、心がこもっていた。落ち着いた弁舌と柔らかな表情に、会場の人々は自然と耳を傾けた。村長の挨拶を上回る内容の濃さと説得力があり、その場にいた全員に深い感銘を与えた。


★挨拶後の様子


挨拶が終わると、僧侶による祈祷と焼香の儀式が進行された。李承業リ・チョンイェ姜允雅カン・ユンアからの助言を思い出し、控えめながらも堂々と振る舞い、礼を尽くした。


焼香が終わると、昼食の場が設けられた。親族や村人たちが談笑する中、李承業リ・チョンイェは自然と注目の的となった。彼は親戚たちとの会話で高麗人参の話題や、自身が見てきた他地域の文化について語り、聞き手を惹きつけた。彼の物腰の柔らかさと話の面白さに、義母張美和チャン・ミファや義理の姉金恵蘭キム・ヘランも目を輝かせ、彼に対してすっかり心を許した様子だった。


「まあ、あの弁舌の素晴らしさといったら!」と義母が感嘆し、義理の姉も「こんな立派な方が私たちとご縁があるなんて」と口にするほどだった。


しかし、その様子を横目で見ていた姜允雅カン・ユンアは、内心穏やかではいられなかった。自分の義母や義理の姉が李承業リ・チョンイェに心を奪われているのを見て、嫉妬の念が湧き上がったのだ。とはいえ、それを表情に出さず、彼女もまた夫の親族の前で気丈に振る舞った。


★締めくくりの様子


夕方、法事の締めくくりとして、再び僧侶の祈祷が行われた。その後、李承業リ・チョンイェは再び立ち上がり、全員に向けて一言感謝の言葉を述べた。


「本日、皆様と共に祖先を敬う時間を過ごせたことに感謝申し上げます。この場の温かさに触れ、私自身も多くを学ばせていただきました。どうかこれからも、皆様のご多幸と村の繁栄を心よりお祈りいたします」


この締めくくりの挨拶により、彼の誠実な人柄はさらに多くの人々の心を捉えた。法事の初日は、李承業リ・チョンイェの印象を強く刻み込む形で終わった。


後書き

法事の初日が終わり、李承業は新たな土地と人々の心に強く刻まれる。

新たな出会いと波乱を予感させつつ、次の幕が上がる。

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