初仕事は熱海~出発~
こんにちは。庭月翠です。
前回は「お還りサービス」についてお話して終わってしまいましたね。
実は少し前に初仕事は終えていました。今回からはその様子をお話していけたらなと思います。拙い文章で恐縮ですが、お付き合いいただければ幸いです。
前回、旅に出るときに相談してくれと言われた私は、Mに電話をかけました。すると私の旅先と還る場所が合致する霊が居たとのことなので、旅行当日にMの家に準備をしに行きました。
「いやー、ほんとありがとね。」
「旅費出してもらえるのはデカいのよ。」
「そっか。じゃあ、早速準備するね。えっとねー…あったあった。」
「何この赤い紐。」
「手首に結ぶの。霊にはもう結んであるから。」
「これで繋がるのね。」
「そそ。だからアンタが歩いたり移動したりするとそれに霊が引っ張られる感じ。」
「外しちゃまずい?」
「移動中はダメ。霊が置いてきぼりになっちゃうから。でも、寝てるときとかは別にどこにも行かないし、銭湯に行きたいときはプライバシーのために外して置いて行っていいから。」
「結構アバウトだね。」
「それくらいしても大丈夫なくらい大人しくて身元もっはきりしてる霊だから。」
「身元。」
「うん。還りたい家の住所もはっきり分かってるから旅の途中にでも立ち寄ってあげて。おうちの敷地内にアンタの紐を投げ込めば大丈夫だから。」
「了解。」
「ん。じゃあ、呼んでくるわ。」
「え、え、え、ちょっと待って。」
「なに?」
「見えるの?私も。霊感ないんだけど。」
「見える見える。その紐に、身を守る用、霊視用、全部の霊力入れてあるから。外すと見えなくなるよ。」
「べんりー。」
Mは別室に引っ込んで、数分後ゆっくりと部屋に入ってきました。
「連れて来たよー。びっくりしないでね。浮いてるけど。」
「うん。」
意を決して顔を上げると、そこには一人の女性がふわふわと浮かんでいました。
年齢は私と同じくらいの20代前半。ロングの茶髪で目鼻立ちのはっきりとした美人さんでした。着ているのは水色のワンピースでパンプスの青とよく合っていました。
「は、はじめましてー…。庭月翠と申します―。」
「あ、どうもー。」
普通に初対面の人とするような挨拶をしてしまいました。だって浮いているだけで、見た目はどっからどう見ても普通の人間でしたから。でも、彼女の声は私の脳内に直接届いているようでした。例えるなら…ものすごく高性能なヘッドフォンを装着しているような感じです。
何とも言えない雰囲気の中、Mだけが慣れた口調で説明を始めました。
「さてと、最終確認させていただきますね。今回はこちらの庭月翠さんにあなたを目的地まで連れて行っていただきます。あなたと翠さんを繋いでいるのはこの紐だけです。そのため、あなたが翠さんに危害を加えようとした場合、翠さんはこの紐をすぐに破棄し、サービスは打ち切りになります。ご了承ください。」
「はい。」
「で、翠。会話に関しては紐付けてれば普通の人間と同じようにできるから。」
「あ、テレパシー的な感じじゃないのね。」
「それもできるっちゃできるけど、人間サイドは訓練してないと考えてること全部筒抜けになっちゃうから逆に不便かなって。」
「確かに。じゃあ、私は声とか筆談で意思を伝えればいいのね。」
「うん。で、霊の声は今みたいに直接アンタの脳内に届くから。じゃあ、気を付けて。目的地は…熱海だっけ。」
「うん。なんか海見たくてさ。あと刺身食べたくなった。」
「いいねいいね。楽しんで。」
「ありがと。…じゃあ、行きますか。よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。」
「良い旅を。逝ってらっしゃい。」
「いってきます。」
「逝ってきます。」
Mに見送られて私と幽霊さんは電車に乗り込みました。
目的地は熱海。長旅が始まりました。
読んでくださりありがとうございました。すみません。全然旅行感ないですね。思ったよりも文量が多くなってしまったので一旦ここで切り上げます。旅の様子は明日からちょくちょく上げます。近況ノートに写真も上げたので見てください。
それではまた!
庭月翠
「お還りサービス」 庭月 翠 @suigyoku0524
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