あこがれ

赤坂英二

あこがれ




 今は春、晴天の昼間。



「……」



 ウリンは長らく空へのあこがれを持っていた。



 一日で何度も空を見上げ、思いをはせる。



「本当に空が好きね」



「気持ちよさそうじゃない?」



「そうね、気持ち良さそうね」




「あーあ、私の名前がもっと空に関する名前だったらな」



「あら自分の名前気に入ってないの?」




「そうじゃなくて、この名前じゃなかったら違う道もあった気がしない? ウリンって人の言葉だと『雨林』というらしいのよ。雨が入っているなんて空好きとしてはなんとも……。雨が入っているから、空好きということもあるけど」




「でも雨も空からくるものよ?」



「なら私は晴天な空が好きなんだわ」



「じゃあ考えてみようか、もしあなたがウリンって名前じゃなかった場合の名前を」



「いいね!」



 ウリンと友達はプカプカとしながら考えだした。



 体に当たる陽の光がポカポカしていて気持ちがいい。



 考え事をしていなかったらウトウトと眠ってしまいそうだった。



「まず、最初に思いつくのは『空』よね。なにしろ空が好きなんだから」




「でも空が好きというよりも空を気持ちよく、浮かんでいる雲を見るのも好きなのよ。あんな風に空に浮かんでいられたら気持ちいいでしょうね~」




「じゃあ名前は『雲』?」




「でも雲は天気が良い時は良いけど、黒くなったりするじゃない? それはちょっと嫌なのよね」




「そうね。なら雲を運ぶ『風』は? 気ままに世界を旅する風って素敵じゃない?」




「風も良いけれど、風って障害物に当たることもあるよね? そうなったら動けないわけよね?」




 ウリンは考え込む。



「それなら『壁』かしらね。丈夫だし中にいれば寒さをしのぐこともできるし」



「そーねー」



「……」



「なんだか空とは関係ない話になってしまったわね」



「やっぱりこの名前が一番すっきり来るわね」



「そうでしょう? あなたはウリンなんだから!」



 ウリンと友達は笑いあった。



 ウリンは空に向かって大声で叫んだ。



「いつかやるわよ。トリノコウリン、ソラヲトブ!」



「トリの降臨?」



「トリの子ウリン、空を飛ぶ!」



「まぁあたしら鳥だからいつでも空は飛べるんだけどね。アヒルだから対して高くは飛べないけど」




 二羽は白い羽毛を池に浮かべて今日もまったりと過ごしている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あこがれ 赤坂英二 @akasakaeiji_dada

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ