第7話 鏡の中にいる可愛い女の子は「ボク」7
僕が女になったことで兄もお姉ちゃんも僕のことを妹のように可愛がってくれます。戸籍も変わったので学校も僕のことを女子として扱ってくれるし、就職も女性として活動しています。ただ、僕には子供のころからの憧れであり、自分を女にした唯一人の男性です。僕はその気持ちを未だに断ち切れないでいます。
でも、それを兄に話すことは出来ませんし、姉妹になったお姉ちゃんに打ち明けることも出来ません。僕はその気持ちを断ち切るためにも、就職したら一人暮らしを始めようと思っています。そのためにもどうしても自立するために希望のデザイン事務所に就職しなければなりません。そんな決意をした時、同級生の稔からメールが来ました。
稔のメールは「彼が会ってくれなくなりました。メールをしても返事がきません。どうしたらいのか分らないの。泣きそうです」と言う内容でした。僕は慌てて電話をしました。すると、稔は「彼からもうお前は必要ないから別れよう、って言ってきたの。もう私、生きていけない」と言って泣いています。僕はすぐに稔と会う約束をして待ち合わせました。
現れた稔は女性の姿ではなく男の姿をしていました。そして「もう僕は女になるのを諦めようと思うんだ。君は僕の憧れだった。君のようにきれいな女性になりたいとずっと思っていた。でも、僕にはそれが出来なかった。心の中では憧れと言うより僕は君のことが好きだったのかもしれない」と言ったのです。
僕には衝撃的な稔の告白でした。そして、別れ際に人が見ている前で稔は僕を抱きしめてキスをしたのです。僕はその晩、中々寝付けなくてずっと稔のことを考えていました。そして、女友達ではなく、稔を男として意識してしまう自分がいることに気づいたのです。それから稔は毎日の様に僕にメールをよこすようになりました。
それは友達としての悩みの相談や学校、就職などのことばかりではなく、僕への好意を感じる内容のものばかりです。そして僕がホルモン注射を打って貰う日取りを知っているので、必ずその帰りに会おうと言ってくるようになりました。僕はホルモンを打って貰った日は身体がとても敏感になり、少しでも触られると鳥肌が立ってしまうくらい感じてしまうのです。
多分稔は自分もホルモンを打っていたので、それを知っていたのかもしれません。稔は意識的に僕の身体を触ってきます。その度に僕がピクンと身体を震わせるのを楽しんでいるのです。そして、僕が初めて稔のアパートへ行った日、彼に抱きしめられ僕は稔に身体を奪われてしまったのです。
僕の身体は既に女性に変わっています。兄の時のアナルとは違い、手術で造った女性器を始めて使った相手が稔だったのです。その時は自分がバージンであることを考える余裕はありませんでしたが、僕が初めて身体を捧げたのは同級生の稔だったのです。
それまで僕は稔に恋愛感情は持っていませんでした。しかも、稔は女性の身体を手に入れることに夢中で、僕はずっと彼を同性のつもりでいました。でも、彼に身体を奪われて初めて稔が男であることを意識し始めました。ただ、こんな中途半端な気持ちで彼と付き合っていいのだろうか? 彼のことが好きとか嫌いとか、そんなことを考えることもなく、僕は稔に身体を許してしまったのです。
◇
僕の身体は手術によって完全に女性に変わっています。元々性分化疾患の僕の身体は遺伝子が普通の男性とは違うので身体が自然に女性化してしまいます。だから僕の胸は豊胸しないのに大きくなっていき、性別適応手術を受けたことで、もう身体は女性と変わりません。
ただ、人工的に作った女性器だけは塞がってしまわないように維持しなければならないし、ホルモン不足にならないために定期的に女性ホルモンを補給する必要があります。だから、ダイレーションは僕の日課で、痛いのを我慢しながら毎日膣にダイレーション棒を入れて癒着しないようにしています。しかも、その後に股間にナプキンを当ててる生理中の様な生活が続いているのです。
でも、僕はそんな生活が少しも苦痛ではなく、本物の女性の姿を手に入れたことでとても満足していました。ただ、そんな女性の身体になった僕が初めて身体を許したのが稔だったことが僕自身とても不思議な気持ちでした。出来れば僕の初めての相手は兄であって欲しかったのです。
子供の頃から何をしても兄には勝てませんでした。すべての点で僕は兄には及ばず、しかも常に比べられてきました。でも、一つだけ兄に勝てることがありました。それは僕が女装をして女の子に変身する事でした。それを知った兄は僕を抱いて初めて女の子にしてくれました。そして僕はの時、絶対兄と比べられることが無いように女性になって生きて行こうと決めたのです。
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