第4話 鏡の中にいる可愛い女の子は「ボク」 4
兄も僕も父に大反対されて大人しく東京へ帰ってきました。でも、二人とも諦めてはいません。それどころか僕は更に女の子になりたいという気持ちは強くなっていきました。ただ、お姉ちゃんは兄と結婚して僕たちは本当の姉妹になれると思っていたのにその願いが叶えられずに泣き崩れてしまったのです。女になれば結婚できると思っていたのに子供が産めないことが悲しくて泣いていたのです。
でも、僕は好きな男性もないし、例え一人でも女として生きいく自分の夢は諦める気持ちはありません。お姉ちゃんだって養子を貰って子どもを育てることだって出来るんです。僕は「絶対に夢を捨てないで、自分のやりたいように生きて行こうよ」と言って励ましました。お兄ちゃんも「お金を貯めて手術を受ければ、戸籍を変えられる。そうすれば正式に結婚できるんだ」と言ってお姉ちゃんを慰めたのです。
◇
それからの2年間で僕の身体は自分でも驚くほど女性化していきました。勿論、ホルモン注射の効果もありましが、僕の遺伝子は普通の男性と違うので、そのスピードが著しく、顔の表情も依然と全く変わってしまいました。そして、夜の仕事で随分お金も溜まったので学生のうちに手術を受ける決意をしました。そして、卒業したら女性として就職したい。
僕は二人一緒に海外へ行って手術を受ければ心強いと思って、お姉ちゃんに「一緒にタイへ行って手術を受けよう」と話すと、お姉ちゃんも「そうね、それなら安心ね」と言ってくれました。言葉の分からない国へ行って手術を受けるのはとても不安だけど、二人一緒なら大丈夫。僕たちは精神科の先生に性同一性障害の診断を貰い渡航手続きを始めました。
でも、現地に行ってからの病院での通訳も必要です。でも、お姉ちゃんがお店のお友達に現地の日本人のアテンダントを紹介して貰ったので、その方にお任せすることにしました。ただ、人気のある病院の先生は予約が既にたくさん入っているので、何カ月も待たなければならないことが分かったのです。でも、それまでに余裕をもって準備をし、僕たちは出発の日を待ちました。
兄は仕事があるので、一緒に来ることは出来ませんでしたが、僕たちはお友達から教えてもらった現地のアテンダントや病院の看護師さんに持って行く日本製品のお土産をたくさん詰めた大きなキャリーバッグを持って現地へ向かいました。そして、空港では現地のアテンダントの女性が待っていてくれたので、安心して病院のある街まで行くことが出来、当日は二人でホテルに泊まり、翌日に備えてゆっくり休みました。
病院へ行く当日はアテンダントがタクシーで迎えに来てくれたのでそれに乗って病院へ向かいました。いろいろな検査があり、最後に精神科の先生に手術の許可をもらい私たちは翌日の手術を待ちました。ただ、苦しかったのは腸の中をきれいにするために下剤を飲まされたり、浣腸を何度もされることです。僕たちは同じ病室だったので、一人ぼっちよりは随分心強く思いました。
ただ、僕たちは同じ日に手術するのではなく、違う日なので、先ず年上のお姉ちゃんが受けることになりました。お姉ちゃんは既に去勢しているので女性器を形成するのに長さが足りず、腸の一部を使って膣を形成することになりました。そのため手術時間が長くなるのです。ただ、僕は去勢手術をしていないので、反転法と言う自分の皮膚を使ってする方法にしました。
ただ、形成する膣の深さを医者に聞かれても答えられません。どのくらいが普通なのかもわからないのです。しかも、女性器の形状も見た事がないのでわかりません。だから全てを病院の先生に任せる以外ないということが分かりました。
そして、お姉ちゃんは長時間の手術を終えて戻ってきました。意識が戻ると激しい痛みにうなされています。目が覚める度に痛み止めの薬を入れ、そしてまた眠るという繰り返しです。その姿を見て僕は怖くなったのですが、これも女の子になるための試練なのだと思いました。
そして翌日、僕の手術の日がやってきました。麻酔の注射を打たれるとそこからの記憶は無くなり、気が付くと元のベッドに寝かされていました。僕が眠っているうちに全てが終わっていたのです。そして、僕も想像を超える痛みに耐える時間が続きました。多分モルヒネを使っているのでしょが、痛み止めを身体に入れると少し楽になり、眠ってしまいます。でも、目が覚めると耐えられない痛みに襲われます。
でも、その痛みも二日過ぎると楽になり、普通にお姉ちゃんと話が出来るようになりました。ただ、一人で歩けるようになって、尿道のカテーテルが外されて普通におしっこが出来るようになるまでには長い時間がかかりました。そして、どうしても男の時のようにオチンチンがあるつもりでおしっこをしてしまうのです。だから女性の排尿に慣れるのにとても時間がかかりました。
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