第2話 鏡の中にいる可愛い女の子は「ボク] 2

勉強した甲斐があって、僕は希望通り東京の美大へ入ることが出来ました。両親からも「お兄ちゃんと一緒に暮らすなら安心ね」と言われ、僕は一人で東京へ向かったのです。勿論、途中で服を着替え、可愛い女の子の姿で兄と彼女の待つ部屋のドアをノックしました。兄は「静、待ってたぞ!」と言われ、彼女からは「今日はとってもかわいいわ。今日からあなたは私の妹よ」といわれて、僕も「今日からよろしくお願いします」と挨拶し、その日から僕は彼女のことを「お姉ちゃん」と呼ぶことにしました。


ただ、大学に入学できたのは嬉しかったけれど、僕はこれから女子学生として過ごすことが出来るのかとても心配でした。入学試験の時、僕はセーラー服を着て受験しました。願書の写真も女装をした姿です。ただ、名前は静雄で性別は男です。でも、試験の時は何も言われず、そのまま合格しました。でも、僕の学生証の名前は静雄のままです。


女の子の姿で学校へ行きことは出来ますが、授業では男の名前で呼ばれることになるし、正体がバレてしまうと女子トイレに入ることも出来なくなります。でも、僕はこれから女の子の姿で暮らしたいと思っています。ただ、それを学校に相談するには僕が性同一性障害だということを医者に証明して貰わなければなりません。そこで、僕はそんな診断をしてもらえる病院を探すことにしました。


そんな時に頼りになるのがお姉ちゃんです。その話を彼女にすると「今度私が病院へ連れて行ってあげるわ。だってあなたは私の妹だもの」と言うのです。病院では医者に詳しく話を聞かれ、自分がこの先女性として生きていきたいと話すと「ホルモン治療を始めるともう元には戻れないよ。それでもいいのかね」と言われましたが、僕の心は既に決まっていました。


そして、性同一性障害だという診断書を貰い、学校に持って行って相談すると戸籍は変わっていないので性別を女性に変更することは出来ないけれど、普段の学校生活で名前を通称名として「しずか」にして、女性として生活することを許可してくれたのです。だからトイレや更衣室も女性用を使用することが出来るようになりました。これで僕は晴れて女子学生として生活できるようになったのです。


毎日、楽しい学校生活を送りながら、月に2回は病院に通い注射を打ってもらうと僕の身体は次第に女性らしく変わっていきました。ただ、その変化の早さにお姉ちゃんは驚いたようです。あっという間に胸が大きくなり、今まで使っていたブラでは収まらなくなったのです。しかも身体にも肉が着き、括れも目立つようになりました。「こんなに早く変化が出る子なんて今まで見た事ないわ。今度、しっかり検査して貰いましょう」と言われ、もう一度一緒に病院へ行きことになりました。


そして、検査の結果、僕は性同一性障害ではなく、染色体の異常による女性の機能を持ったDSD(性分化疾患)と言うことが分かったのです。ただし、僕には膣も子宮も卵巣もなく、精巣はあってもその働きは弱く生殖機能が無いことが分かったのです。もともと小さなペニスは更に小さくなり、このまま女性ホルモンを注射していくと僕の身体は更に女性化していくことが分かったのです。


医者にはこれから女性として生きていくには性別適応手術を受けて人工の女性器を作れば、子供を産むことは出来ないけれど、戸籍を変更すれば女性として生きていくことは出来ますよ、と言われました。


このまま男性として生きていく場合は、男性ホルモンを定期的に注射すれば女性化が止められるので、男性として生きていくことは出来ますと医者に言われたのです。でも、僕はもう女性として生きて行こうと心に決めてしまったので、手術によって人工の女性器を生成する道を選ぶことにしました。そして、手術を受けるならば女性ホルモンを2年以上続けるように言われました。


僕は卒業したら女性としてイラストレーターの道に進みたいと思っています。そのためにも学生のうちにお金を貯めて手術を受けたいと思い、僕は真っ先にお姉ちゃんに相談しました。すると彼女は「それならば私のお店で働きなさい。そうすればすぐにお金が溜まるわ。それに静ちゃんの身体はもう女の子と変わらないくらい女性化しているから直ぐにお店で働けるわよ」と言ったのです。僕は学校に通いながら、学校には内緒で夜はお姉ちゃんと同じお店で働くことを決めました。


そして、僕の風俗デビューの日がやってきました。お姉ちゃんにお客の扱いをいろいろ教えてもらいましたが、初めての日はとても緊張します。でも、同じお店にお姉ちゃんがいるのでとても安心です。それにお客は僕が男だということを知っているニューハーフヘルス店ですから、とても気が楽でした。そして、お店が僕のデビューの日を宣伝してくれたこともあり、初ものを狙ったお客の予約がたくさん入ったのです。

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