第9話

「…明日、色々買い物にでも行く?」


 片膝を立てて、そこに頭を乗せた格好で、ご主人は僕に微笑んだ。

 嫌な感じの沈黙が、一気に崩れ去る…

 思わず見とれちゃいそうになったけど、ボーっとしてちゃいけないって思って、僕は慌てて答えた。

「行きたいっ!買い物!!」

 僕は何せネコだったわけなので、買い物なんて行ったことはない。

 でも、お金のことは多少知ってるよ。計算もできる。ご主人が話してるのとか聞いて、ちゃんと勉強してたのだ☆テレビもよく見てるし。ニュースとか、たまに、株とかについてもみたりするんだから♪

 …てか、買い物といえば、デートの定番ではないかっ?!そうだ、間違いなくデートの定番だ!これに、映画と、キスがつけば、完璧なデートだ!…ま、それはつかないと思うけどね。

 「よし、決まり☆まずは、青の服と…替えの下着…下着は一緒に見に行くのは無理だな~。あとは歯ブラシも必要だろ?洗顔とか化粧水とかも必要なのかな?化粧品も…で、あ、靴もいるよな。他に欲しいものは?あったら言っていいよ。あんま金ないから、高いものは無理だけど…」

「うん、ありがと!…あ、実は今、下着つけてなくて…外出るの…ちょっと…その…」

 僕は、ちょっとした衝撃告白なので、緊張しながら言った。



「…はいぃ~っ?!!」



 あぁ~、やっぱり驚いてる…よくわかんないけど、とりあえず普通に下着つけてないっていうのは有り得ないんだよね?ヤバイよね??でもしょうがないじゃ~ん!

 緊張やら、なんか恥ずかしいやらで、僕はちょっと泣きそうになった。



 しばらく考えて、ご主人は、真っ赤な顔で、僕から目はそらしたままで、上着をはおると、ボソッと言った。


「とりあえずコンビニで買って来ます…」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る