第4話
ガチャ…
「ただいまー…」
ひどく疲れたような様子でご主人が帰ってきた。時計を見ると10:48。予想的中。きっと、今日も部活の後に、みんなでご飯でも食べに行ったんだろう。疲れてるんだから早く帰ってくればいいのに…と、勝手な僕は思うのだけど、やっぱり人づき合いっていうか、色々あるんだろうなあ。
「…お、おかえりなさい」
そういえば、人間の姿になってから声を出してなかった。せっかく、生まれて初めてちゃんとご主人に、おかえりが言えるという素晴らしい状況だったのに、最初の一言が裏返っちゃって失敗しちゃった…恥ずかしくなって僕は苦笑いした。人間の体って使いづらい…
ご主人は僕の姿を見つけると、時間がそのまま止まっちゃったみたいに固まってしまった。そして何秒か固まっていた後に、微妙~な苦笑いで、出ていった。僕は、そのご主人の苦笑いがあまりにかわいくって、こんな状況で不謹慎にもドキッとしてしまっていたのだけど。で、どうするのかと思いきや、ご主人は、またすぐドアを開けた。今度は入ってくる前に、おそるおそる…といった感じで、中を覗き込んできた。
目が合ってしまったので、
「はぁい(にっこり)」
僕の方も苦笑いで、ご主人に話し掛けた。
ご主人は、はぁー…って、おっきな溜め息をついて、うつむいたまま中に入ってくると、
こめかみを押さえながら、一言、
「なんで幽霊が俺の服を着てるんだ?」
と、独り言か僕に言ったかわからないような声のトーンで呟いた。
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