第3話

こんなコトって、有り得るのかっ?!ていうか、こんなことがあっていいのか??

 僕はホントにもう、とてもじゃないけど信じられなくて、何度も何度も鏡を見ては溜め息をついた。お腹が空いていたのも、なんかどうでもよくなってしまった…とてもじゃないけど、ご飯を食べる気には、もうなれなかった。

 夢でもみてるのかとも思って、冷たい水でバシャバシャと顔を洗ってみたり(いつもご主人がやってるように真似してみたけど難しかった)、ベッドの上をゴロゴロ転がってみたりしたけど、結果は何も変わらなかった。変わったことといえば、ベッドの角に頭をぶつけて、タンコブが出来たことくらいだ。(だって、いつもの僕なら絶対にぶつからないもの。サイズ的に。)


ようやく心臓のドキドキいうのもおさまって、僕も、これが夢じゃないっていうことを、仕方なしに認め始めた頃には、部屋の中はすっかり暗くなっていた。カーテンを開けると、空には糸みたいに細い月が出ている。そういえば、昨日は新月で月が出ていなかったかもしれない。

僕はもう一度深~く溜め息をついて、人間の女の子なんだから服を着なくちゃいけないな、と思い、干してあったご主人の服の中から、僕の目から見て可愛い方だと思うピンクのプレイボーイのTシャツと、白のアディダスのハーフパンツを借りて着た。ご主人が着てちょうどいいサイズのその服は、僕が着るとダボダボで、妙におかしかった。

 僕はまた鏡の前に行って、じっくり、自分の姿を観察した。

 日焼けしてない真っ白な肌(まぁ当然だけど)、小さくて薄くほんのり赤い唇に、低くてとがった鼻、ネコの時と変わらないのは、暗いグレーっぽいブルーのまぁるい目と、銀ってご主人が言うグレーの毛…っていうか髪の毛。髪の毛は背中にかかるくらい長い。背は…ご主人が立った時の高さと比較してみると、30cm位差があるから、150cm位かなぁ。

『なんかネコの時の姿の方が、可愛い気がする…』

溜め息を吐くのも疲れたので、気持ちを変えて深呼吸をした。


机の上のデジタル時計を見ると、PM9:05。ご主人が帰ってくるのは多分、11時過ぎになると思うから…仕方ない、テレビを見て待つことにしよう。



 何気なしにつけたテレビ。芸人サンたちがわいわいと楽しそうにしてる。

 『バラエティーだからって浮かれすぎだよ…』

 もちろん、そんな楽しい気分にはなれない僕は、ちょうどアップで映った、ミキの昴生を睨んで、チャンネルを変えた。


 あ~ぁ、ご主人、早く帰ってこないかなあ。

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