青木

Endroll

第43話

青木が気が付くと、今度は黒い服の男性二人と向かい合って座っていた。若い方の男は、室内であるにもかかわらず、何故か帽子をかぶったままであった。カッチリと形の整ったその帽子には、正面に金色に輝く大きな飾りがついていた。

『センスのない帽子だな』

青木は視線をずらした。傍らには、バインダーを抱えた女性が一人。この人も、何故か黒い服を着ている。

「なぜあんなことをした」

若い男は青木に顔を近づけながら問い掛けてくる。男が動く度、飾りからは細かい光が反射して揺らめく。

『あんなこと?あんなことって、何だ?』

青木は少し顔をしかめながら、自分は何もしていない、と思った。いや、何もしていないというよりも、青木自身にも何が起こったのかわからなかったのだ。仮に何かが起こっていたとしても、それが何なのか、それを起こしたのが自分であるか否か、青木には知る由もなかった。

「わからない」

「わからないということはないだろう。君がしたことだ。」

「でも、わからないんです。」

「何がわからないんだね?それとも、質問の意図が、わかりづらかったかな?」

今度は年配の男が、変な笑顔を作りながら、わざとらしく優しく言う。

 しかし、青木は他に答えようがなかった。

「・・・わからない」

全てわからない、と。それしか、言うことができなかった。

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