第37話

電車に数十分揺られ、やっと目的の駅に着いた。

車内の暖かさに、ウトウトと眠っていた青木は、発車寸前に慌てて電車を飛び降りた。

不思議な夢を見ていた。

中島が出てきた。中島は、額のキノコを必死で押さえながら、苦しげな表情で脂汗さえ浮かべて、青木に何度も繰り返すのだ。

「キノコに全てを乗っ取られる」

・・・と。


駅を出て、商店街を抜ける。コンビニのある十字路で左折して、まっすぐ歩いていく。途中、神社がある。青木は、不意に思い立って、お参りをすることにした。脇にある石段を登り、境内に入る。あいにく小銭がなかったので、賽銭を入れずにガラガラと鈴を鳴らすと、静かに手を合わせ、目をつぶった。

『この先なにがあっても、僕はかまいません。

 ただ、真衣だけは、何もしらないままで幸せになってほしい。

 どうか、彼女をお守りください。』

ジャリ・・・後ろで何か物音がして振り返ったが、人影らしきものは見当たらなかった。

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