第36話

次の日、なかなか寝付けなかった青木は、すっかり寝坊してしまった。行動開始時刻を九時に予定していて、目覚ましを七時半にセットしていたのだが、どうやら無意識のうちに止めてしまっていたらしい。時刻は十一時近くになっている。ホテルの朝食サービスももう終わってしまっていた。

どうしようかと迷った末、青木は必要な荷物だけを、鞄に入れ、部屋を出た。駅近くのファーストフードに入り、セットメニューを注文する。ニ階席に上がると、足早に行き交う人の群れは、まるでミニチュアのように見えた。

これだけたくさんの人がいるというのに、その中の一人として、青木のことを知らない。なんだか不思議な感覚であった。自分は誰にも気付かれていない、誰にも気にとめられていない・・・そんな思いがよぎった。

また頭痛がしてきたのだが、とりあえず協会を訪れてみることに決め、昨日大まかに写し書きしておいた協会周辺の略地図と、乗る予定の路線の名称・方面を再度確認した。

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