眩暈
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第28話
そうして時間は経ち、夏も終わりに近づいたある日のだった。
青木は、真衣との待ち合わせで駅前の時計広場にいた。待ち合わせの時間は十時。気持ちが急いて、早々と到着していた青木は、時計を見上げ、深呼吸をして呼吸を整えると、服についたホコリを払った。
雲のほとんどない快晴だった。残暑は厳しく、まだ午前中だというのに、気温は高い。通り過ぎる人たちも一様に、上着を脱ぎ、半袖やノースリーブという格好であった。青木も、長袖のシャツの袖を捲り、Tシャツの襟元をパタパタとさせた。
よく見ると、歩いていく人たちが、皆同じ方を向いて、妙な顔をしていく。青木は、不審に思い、視線の先を追った。
そこには奇妙な歩き方の、みすぼらしい男がいた。大勢の中でも明らかに彼は浮いていた。年は五十過ぎくらいだろうか?ホームレスのようにも見えるが、アル中か或いは薬物中毒者のようにも見える。足取りは不確かで、よろけながら通る人の顔をまじまじと見つめている。
関わり合いになりたくないな、と青木は思った。もうすぐ真衣も来る頃だろう。時計は九時五十八分を指している。・・・と、時計から視線を落とした青木の目は、男を再度捕らえた。運悪く、男も青木に気付いたようだった。ニヤリと不気味に笑い、フラフラと青木に近寄ってくる。
『しまった・・・』
青木は思ったが、既に遅かった。男の目は、確実に青木へと向けられている。
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