第26話

真衣の手料理は最高だった。

夏らしい冷しゃぶサラダに、薄味のレンコンのポタージュ、チキンとトマトのマリネ、デザートに紅茶のゼリーまでついていた。味はどれもプロ並みで、しかし手作りの優しさがあった。

「意外だな。こんなに料理上手だとは思ってなかったよ。」

「でしょ?元々、食べるのが好きだからかな、料理もけっこう好きなの。外で食べて、おいしいと思ったら真似して作ってみたりとかね。」

「へえ・・・」

「午後からは?」

「ん?予定ってこと?」

「うん、何か用事でもあるのかなと思って・・・」

「いや、特にないよ。」

「そっか・・・」

 何か言いたそうな面持ちのまま、真衣は食器を流しに片付け始めた。カチャカチャという食器の音だけが続く。

「・・・観たいと思ってた映画が、DVDレンタル開始してるんだけど、借りてきて一緒に観ないか?」

 青木は真衣の小さな後ろ姿に問い掛けた。

キュッと、蛇口を閉める音がして、目線だけ振り返りながら、真衣が言った。

「夕ご飯も、二人分、買っていいの?」

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