第25話

午前中のうちに部屋に散乱していたキノコをきれいに片付けることにした。今まで気にならなかったのが不思議なくらい、部屋は曇っていた。

『キノコは菌類だ』

 中島の遺書の一文が青木の頭をよぎった。一瞬のためらいの後、青木は靴を履いて向かいのコンビニへと向かった。

 

買ってきた花粉症対策のマスクを着用してから、窓を開け放ち、キノコを拾い集めてゴミ袋にまとめると、掃除機をかけた。ぼんやりと霞んでいた部屋の全てが、輪郭を取り戻したように見える。

そしてたまっていた洗濯物を洗い、干した。たまっていたと言っても、ロクに着替えもしていなかったので、そこまで多くはなかったのだが・・・


一段落して時計を見ると、まだ十一時半を過ぎたところだった。せっかくなので、全て一気に済ませてしまおうと考えた青木は、散髪へも行ってしまうことにした。行きつけの美容室へと、どんなヘアースタイルにしようか悩みながら向かった。

シャンプーを終えて鏡の前に座ってはじめて、額にキノコが生えていたことを思い出し慌てたのだが、どうやら青木以外の人には、キノコは見えていないようであった。


イメージ通りの髪型を手に入れ、のびっぱなしになっていた無精髭も綺麗にシェービングしてもらい、すっかり晴れ晴れとした気分で青木は家に戻った。

「遅い!」

青木の顔を見るなり、ドアの前に座っていた真衣は立ち上がって一喝した。両脇にはスーパーの袋が置かれている。

「実は・・・お昼ご飯一人で食べるの寂しくて、来ちゃった。

悠ったら、起きたらもういないんだもん。」

と恥ずかしそうにつけ加えた。

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