第24話
翌朝、青木は真衣を起こさないよう、そっと真衣の部屋を出た。
昨夜は、真衣の部屋に泊まることになってしまった・・・いや、自分がそうしたのだが。シャワーも借り、服まで洗濯・乾燥・アイロンまでしてもらってしまった。
青木は女性と夜を過ごすのは初めてではなかった。高校時代に、何人かと付き合い、そういうこともあったのだ。だが、訊くと、真衣は初めてなのだという。電気を消して、カーテンを閉めた。しかしながら、小さな部屋は、淡い間接照明だけでも十分すぎる明るさだった。あまり暗いと不安なのだと言う。
青木は、そっと優しく、愛おしさを込めて触れた。まるで孵ったばかりの小鳥のように、真衣は小さく震えていた。
「怖い?」
頬を指でなぞりながら尋ねると、真衣は首を振った。
「違うの・・・恥ずかしくて・・・」
僅かに瞳を潤ませ目を逸らすその表情に、青木は熱い想いを一層硬くして、真衣を抱いた。
昨夜のことを思い返しながら家に向かって歩いていた青木だが、今更ながらに、真衣を抱いてしまったことに、少し罪悪感を覚えていた。これからどう接したら良いのか・・・不誠実なことはできない、と思った。単なる勢いではなかったが、真衣の告白に対して、きちんとした返答もせずに、流れで朝を迎えてしまったことを、申し訳なく思うのだ。
大きく溜め息を吐くと、キノコだらけの部屋の扉を開いた。
何にせよ、真衣と会ったことで、青木の気分はいくらか違っていることは確かだった。昨日の事をあれこれと思い返しながら、色々と大変だな、と呟くと頭をガシガシ掻いた。
コンビニの袋をテーブルに置くと、キノコを蹴散らして座る場所を確保した。ほんの十センチほど開いたカーテンの隙間から、もやもやとした部屋の中に、陽の光が射し込んでいる。
コンビニで買ったハムサンドを頬張り、缶コーヒーの青いパッケージを見つめながら、青木はキノコを処分することを決意した。
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