第18話

もう何日が経ったのだろうか・・・

青木は久々にケータイを手に取り、画面を開いた。しばらく充電すらしていなかった為、電源が落ちてしまっていた。充電器に繋ぎ、電源を入れて日付を見ると、気づかないうちにもう二十日も経過していた。

「そんなに経っていたのか・・・」

青木はポツリと呟いた。

メールは広告なども含めて九十七件、着信は二十六件もあった。電源が切れてしまった後の着信が何件あるかはわからないが、もう少し増えるだろう。

重い腰を上げ、しばらくぶりに顔を洗おうと洗面台に立った。

・・・と、鏡を見て、青木は言葉を失った。

額にキノコが生えていた。

まだ小さい、本当にしめじか何かのようなものだったが、間違いなくそれは生えていた。一番初めに出会った、首吊り死体のキノコのように、そして、自ら命を絶ってしまった、かけがえのない友人のように・・・

青木は膝をつき、壁に寄りかかり、笑った。何に対して笑っているのかさえ定かではない。自分にたいしての嘲笑といったところだろうか。呼吸を乱すほどに笑い続けながら、不意に泣けてきた。




 突如、青木の手元で歌が流れ始めた。

携帯電話から流れる、着うた、だ。画面を見てみると、同じグループの真衣からだった。

「もしもし?悠?」

「ああ、そうだけど。どうした?」

「どうしたじゃないわよ!もう、3週間も何してたの?なんで電話もでてくれなかったの?メールだって送って・・・そう、中島くんが・・・っていうのは知ってるよね?それが理由なの?私、心配して・・・」

「ちょ・・・ちょっと待てよ、いきなりそんなに訊かれたって、答えられるわけないだろ?きちんと整理して話そう。」

「あ、ごめんね・・・えっと、今、悠の家の近くにいるんだけど、出てこれる?会って話した方がいいと思うの。もし出てくるのが無理だったら私が行くけど・・・」

このキノコだらけの部屋に入れるわけにはいかない。

「いや、出るよ。ついさっき起きたところだから、5分くらい待ってもらえるかな?」

「わかった。向かいのコンビニにいるわね。」

青木は電話を切ると、手近にあったジーンズに履き替え、Tシャツの上からシャツを羽織った。

「よし・・・」

鏡に向かって呟くと、似合わないと壁につるしたままになっていたオレンジのキャップをかぶり、額のキノコを隠し、家を出た。

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