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第17話
青木は、廃屋から大量のキノコを抱え、家に帰った。
最後に中島のもとを訪れた時にもらったキノコも冷蔵庫から取り出した。どれも腐ることなく、何ともいい匂いを放っていた。
両手に持てるだけのキノコを鍋に入れ、煮た。そしてそれを食べ、煮汁も残さず飲んだ。一つ一つが、違った味わいを持ち、その全てが優しく、少し切なく感じられた。涙が、ただただ溢れて止まらなかった。
「中島・・・おまえ、実は寂しかったのか?
理由のない寂しさをいつも感じていたんじゃないのか?
このキノコは・・・なんでこんなにあったかい、やさしい味わいをしてるんだろうな・・・なんで俺は前に食ったときは、感じなかったんだろうなあ・・・
おまえは、ずっと感じてたのか?
教えてくれよ・・・」
答えなど、返ってくるはずはない。
わかっていながら、青木は返答のなく、静まり返った部屋に、泣き崩れた。
その日を境に、青木はひたすらキノコを食べ続けた。キノコを食べたくて仕方が無かった。いや、キノコ意外のものなど、食べたいとすら思わなかった。
学校へも行かず、何をする気も起きず、キノコを食べ、ぼんやりと窓の外を眺め、毎日を過ごした。
時間の感覚も、日にちの感覚もなかった。
お腹がすいたらキノコを貪り、日が沈んだら横になる。眠れないときは、窓から見える星空を眺めた。悪夢にうなされて目覚めるることもあった。起きているのかいないのか、これが夢なのか現実なのか・・・だんだんとその境界すらわからなくなり、全てがぼんやりと、輪郭を失っていった。
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