第11話
「そうだ、中島・・・お前、気付いてるか?お前の額にも、小さいけどキノコが・・・」
「あぁ・・・また、金を作って東京に行かなきゃいけないんだ。今度はキノコを取ってもらいにね。先にチケットを手に入れなきゃいけないんだけどな。キノコを取るには特殊な技術がいるんだ。むしり取ったりでもしたら大変なことになる。前見ただろ?」
何のことだかわからない。
確かに、中島がキノコをむしった女は、それが原因かはわからないものの、青木たちが見ている所で発狂した。
「あのキノコ女のように、か?」
「ああ。まあ、人それぞれらしいけどな。とにかくまあ、色々と手続きとか申請とかもあって苦戦してるんだ。早くなんとかしないことには、外へも出られないからな。」
中島が何を言っているのか、全く掴めない。
青木はすっかり気味が悪くなって、バイトで疲れていることを口実に、逃げるように帰った。
帰り際、中島は青木にスーパーの袋一袋分のキノコを手渡しながら、
「そうだ、せっかくオマエにも、と思って、上質なヤツもいくつか買ってきたんだ。このあたりが良いヤツで・・・あとはまあ、普通のヤツだが、やるよ。」
と言い、オススメの調理法なども詳しく教えてくれた。
しかし青木は、とても食べる気にはなれず、家に戻ると、まるで遠ざけるかのように、冷蔵庫の野菜室の一番奥に袋を置いた。
キノコを見るのすら厭だった。
これ以上関わり合いになりたくなかった。
目を逸らしていたかった。
何より怖かった。
『あのキノコは一体何なのか?中島の変貌はあのキノコのせいなのか、そして中島の額に生え始めていたキノコ・・・なぜ中島にまではえてきたのだろう?あのキノコを食べつづけると起こる副作用的なものだろうか・・・』
考えようとすればする程、言い知れぬ恐怖が青木を襲った。
中島のことは確かに気がかりであったが、青木は己の保身を第一と考えた。
中島は次の日も大学へは来なかった。
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