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第6話
肝試しの後、何かが変わったのかというと、そんなことはなかった。大学は退屈で、毎日変化のない日々だった。講義はつまらないし、これといった事件も起きはしない。錯乱状態にあった仲間たちも、一ヶ月ほど経つと、そんなことはなかったかのように元気に戻った。くだらない話に花を咲かせ、暇な日には、カラオケに行ったり、飲みに行ったりしていた。
青木もそんな日常にすっかり戻り、肝試しのことも、あのキノコのことも、全て忘れていた。
肝試しの事件から、ちょうど二ヶ月が経った日だった。
中島がいきなり家に押しかけてきた。家に入るなり、彼はキノコを取り出した。
「近所のガキが飛び降り自殺したんだ。通夜に行ったら、キノコが生えてた・・・思わず、取ってきちまったんだ」
そのキノコは、あの女性のものより、いくらか小ぶりで、色が薄い。白いぶなしめじがあるが、あれと似ている。
「大丈夫なのか?見つかったりしなかったか?」
「ああ、誰も気付いてないみたいだった。
それより、早く食おうぜ!」
二人はまた、そのキノコを軽く調理して食べた。
「前のより、柔らかいな。」
「ああ。でもやっぱり旨いな・・・」
「本当、不思議なキノコだよな。」
「こんなに旨いんだから、図鑑に載っててもおかしくないと思うんだけどな。」
「中島、オマエわざわざ調べたのか?」
「ああ、気になって・・・でも結局、どの図鑑にも載っていなかったよ。ネットとかで調べれば出てくるかもしれないな・・・」
「そうだな。」
「今度調べてみるよ。」
「ま、俺はどうでもいいけどな。」
「オマエは食うこと専門だからな。」
「あ、バカにすんなって!」
「はははは」
実際、中島の言う通り、青木はあまり深く追求するタイプではないし、食べ物に関しては、食えればいい、旨ければなおよし、という人間であった。
そのキノコがどのような種類のものであろうが関係ない。
食ったら旨かった、青木にとってはそれだけで十分なのだ。
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