第2話
年齢は恐らく30歳位だろうか。天井の低いこの廃屋のはりに縄をくくり、首を吊っていた。元の背は低そうなこの女性の顔は、ちょうど青木の目線と同じくらいにあり、曇りきった瞳で哀しげに青木を見つめている。それにもかかわらず、腐食が進んだ為か、首は伸びきり、膝が床についてしまっているほどであった。
皆、互いに手を引き、逃げ去る中、青木は、その女性の額に生えたキノコに釘付けになっていた。思わず手を伸ばし触れると、思いのほか簡単に、ポロッと取れた。
大きさは、かさが直径八センチメートル程、高さが十センチメートル程であった。シメジか、なめこが肥大したような外観で、かさには艶があり、弾力もあった。そして何より、少し上品な、とても美味しそうな匂いを放っていた。
青木はそれをポケットに詰め込むと、ゆっくりと外へ出た。
死体を見たのは初めてであったが、不思議と青木に恐怖はなかった。混乱や、動揺もなく、ひどく冷静であった。
外は大変なことになっていた。
ひたすら嘔吐し続ける女と、その背中をさすりながら蒼白な顔で吐き気をこらえる男、奇妙な顔つきで笑い転げる男女、ひたすら泣き続ける女・・・真衣は、自分も涙目でありながら、懸命にその女を慰めていた。真衣以外は顔を伏せていたりしていて、誰がどの状態にいるのか、把握が難しかった。
唯一、中島は青木と同様、平然としていた。
二人は警察に連絡し、嘔吐をしている者や様子のおかしい者もいることから、念のため救急車を呼んだ。事情聴取をされる事などを考えると憂鬱だった。
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