キノコ

第1話

始まりは、本当に誰にでも起こり得る所に転がっているものだ。


   


 夏の暑い日だった。

 青木は、仲の良いグループで肝試しに行くことにした。といっても、夜ではない。講義をサボって昼間っからだ。そこは町外れにある廃墟で、裏が山だという事もあり、昼間でも涼しく、また、不気味さを携えている場所であった。

 男4人、女4人の計8人だった。

 二人ずつペアになって入ろうということになり、即席でくじを作り、ペアを決めた。青木のペアは、グループの中ではわりとしっかり者の真衣であった。

 「なんだか緊張するわね。1番目の人達がすごく怖がって出てきたりしたら、私入るの嫌になっちゃうかも。」

 真衣は肩をすくめると青木に笑いかけた。


 青木たちは2番目であった。自分から今回の肝試しを提案しておきながら、青木はあまり乗り気ではなくなっていた。近づいてみると、その廃屋は思っていたほどには怖くなかったのだ。

 初めのペアが入る・・・古ぼけたその戸は、ギシギシと酷い音を立てた。家屋の中は、陽の光が入らず、また、長年蓄積されたのであろう埃でもやがかかったようになっていた。

 「うわぁ・・・すごい埃が積もってるよ。足跡つくもん!」ペアの女が声をあげる。埃がまるで雪のように積もっているのが、外からでも見えた。一センチメートルほどはあるだろうか。ペアの女のミュールの跡と、男のビーチサンダルの跡が並んでついている。

 「なあ、あれ・・・」

青木は横にいた真衣にではなく、自分の斜め前にいた中島に言った。

 中島も気付いたらしく、青木と同じものに目線が釘付けになっている。

「・・・ああ、あいつらの他に、もう一つ足跡が・・・」

中島が言いかけたその時だった。

 中から、全てを引き裂くような、女の悲鳴が聞こえてきた。

 外にいた全員が中へと駆け込んだ。


 悲鳴を上げ、腰を抜かしている二人の指差す先には、腐乱した、女性の死体があった。

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