第10話
ピンポーン…
一度目のチャイムが鳴った。
立て続けに何度もチャイムが鳴らされる。ドアノブをガチャガチャとまわす音も聴こえたけど、鍵は一応かけてあった。彼女が合いカギを持ってたら終わりだけど、それはないらしい。
ケンタはあたしに向けて人指し指を一本立て、口を尖らせた。言われなくたって静かにしてるよ。
またケンタのケータイが騒がしく鳴り始める。止んでは鳴り、またチャイムが鳴り、今度はケータイが…
何度も何度も繰り返される。
気が狂いそうだ。
いっそ出てって、ヤリましたごめんなさいもう帰りますさようなら…って言ってやりたいくらいだった。
静まりかえり、最後に一度ケータイが鳴ると、廊下を去っていく彼女の足音が聴こえた。
少しして、ケンタが起き上がりケータイを開く。何も言わず、安堵した表情であたしに画面を見せる。
『何回もピンポンしたヶド、けんた出なかった…もぉ寝ちゃったんだょね…(泣)おウチ帰ってひとりで寝ます。ショボン… 杏奈』
完全にバカップルの文面じゃん…とツッコミたいけどやめておく。
「いつもあんなに何回もチャイム鳴らすの?」
「え?うん。」
「電話も?」
「うん、普通だろ?」
「いや…私ならしないね。ウザイじゃん。」
「そうかなぁ?」
「まぁいいや。少し寝させて…マジ寿命縮んだよ。」
「俺も~!悪いことはするモンじゃねぇな~!」
ホッとしたのか、すっかり元気を取り戻したケンタに、無性に腹が立った。
小さく舌打ちをして、あたしは眠りについた。夢の中であたしは、顔も知らないケンタの彼女に責め立てられ、悪者にされてた。
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