第10話 お手本のような優しさ
僕、カイ・コーノは王政軍と反王政軍の争いが各地で少しずつ起こり始めた社会情勢の中、5年前、気づいたらサファリング星から地球に転移していた。
地球での生活の中で裕二さんに拾われ、山上家の一員として、奈央さんや優奈と幸せに暮らし、和樹や未来といった大切な友達もできた。
そして高校生活1日目である今日、いつも通り、和樹や未来と登校しようとしたが、
突如、サファリング星の事務所が空に出現。
和樹と別れ、事務所に行こうとするが、道中で新一年生の花村雄馬くんと出会い、
一緒に登校した。
放課後、事務所へ向かい、サウルス第二調査団団長イグアとの話で地球の資源を奪い取り、人間を家畜やモルモットとしてしか見ていないことを知り、反逆した。
カマキからの逃亡中に雄馬くんと出会い、雄馬くんを守る為にカマキと激闘の末、
追い返すことに成功。
雄馬くんと別れ、家に帰ると朝別れて学校をサボったと思っていた和樹がまだ家に帰っていない事を今、奈央さんと優奈に知らされた。
「カイは知らないの?和樹のこと・・・。今朝一緒に学校行ったんでしょ?」
いつもマイペースで冷たい対応の優奈が珍しく動揺しているのか、髪が乱れて、
少し汗もかいている。
「いや、それが途中で別れてその後は会ってない。学校も来てなかったし・・・。
でも、まだ7時過ぎだから和樹のことだしどこかでぶらぶらしてるんじゃないか?」
僕がそう言い放った瞬間、優奈が僕を睨みつける。
「カイ君、落ち着いて聞いてね。実は道端で和樹君の学生鞄と粉々に割れたスマホが
道端に落ちていたみたいなの。家にも帰ってないってみっちゃんから電話が・・」
あのお調子者でゲーム鬼つよの和樹に限ってそんなことは・・・
「カイってさ、いつもそうだよね」優奈が突然言った。
「えっ・・・?」
「何度連絡しても出てくれないし。普段は真面目で、家の手伝いまでしてさ。私も助けてもらってる。
義理堅いって言うの?誰とでも上手くやっていけてるけど、なんか冷たいよね。
もっと心配にならないの和樹のこと?」
「優奈・・・・」奈央さんが止めようとしたが、もう遅かった。
「大体、今日だって、朝は一緒に登校する約束してたんでしょ。それを破って、
何してたの?学校来てないことに何も思わなかったの?連絡ぐらいするのが普通じゃん。私も未来ちゃんもママもカイが帰ってくるちょっと前までずっと和樹を探しに行ってたんだよ。みっちゃんだってずっと泣いてた。そりゃそうだよね自分の子供がいなくなったんだから。なのにカイはそんな泥だらけで何してたの?
また人助け?ホント好きだよね。外でカッコつけるn・・・・・」
「やめなさい」奈央さんが優奈に怒鳴った。
「だっていつもそうじゃん」
「やめなさい。心配なのはわかるけど、そう言う事は言っちゃいけません」
「ホント、ママは綺麗事が好きだねっ。そうやって綺麗事で収まればいいのにね」
心配や怒り、不安が混ざったそんな言葉を残して、優奈は階段を駆け上り、
自室に戻った。
「ごめんね、カイ君。カイ君も疲れて帰って来たばかりなのに。優奈があんな事」
「大丈夫ですよ。本当の事ですし。連絡も気づかないで、ほっつき歩いて、
みんなが和樹を探している時に・・・」
「カイ君・・・」
奈央さんが心配そうに僕を見ている。和樹が居なくてと奈央さんに気を遣わせているこの状況が嫌だったのか?・・・
「すみません。僕、ちょっと和樹を探しに行ってきます」
「もう、暗いし明日に・・・」
「大丈夫、ちょっと行ってくるだけですから」
そう言って、家を出た。
僕が自分が、サファリング星に帰ることを優先したせいで、自分勝手なせいで、
和樹や雄馬くん、未来、奈央さん、美波さん・・・・
優奈を傷つけたんだ。
日が沈み、ほとんど何も見えない夜空の下でただひたすら友達の名前を呼び続けた。
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