第7話 勇気が湧いた言葉

「うぁーつ」左手の指先全てから糸を出し束ねる。遊具としてぶら下がっていたタイヤに糸を巻きつけハンマー投げのようにカマキに向かって投げる。

カマキは飛んできたタイヤを避けず、鎌でタイヤを真っ二つにした後、こちらに向かって走ってくる。

「意味ないんだよっ、そんなショボ攻撃ー」

叫びながら僕に飛びかかってくるカマキの斬撃を避けるために倒れ込み、向こう側にある鉄棒に糸をくくり付けて背中を地面に引きずりながら移動する。

「いてててぇ・・」

痛がっている僕に構わず、すぐにこちらにやって来てカマキは背後から鎌を振り回す。前屈みになり頭に当たるのを回避して前転する。鉄棒の支え棒に激突し、

また背中を打ちつける。カマキの鎌がある方の手を蹴って体勢を立て直す。

糸をジャングルジムにくくり付け移動しようとした瞬間、

「ホント、ムカつくっー」カマキが糸を鎌で切り僕の顔を蹴り飛ばす。

「ぐあっ・・」そのまま僕は肘と膝を地面に打ちつける。

「少しはやるかと思ったけど、逃げてばっか・・・。ホント、弱っっ」

倒れている僕を仰向けにして足でお腹を踏みつける。

「出てこいよーっ、ガキ。この兄ちゃん死んじゃうぞ。まぁいいか、どうでもいいよなぁ。コイツ人間じゃないもんなー」

「えっ・・・」

雄馬はカマキの発言で体育座りをやめ立ち上がり、ドームの外に出る。

「人間じゃないってどゆうこと?・・・」

「あれれっ、もしかしてサファリング星人って事を言ってなかったか。それでよく差別しないなんて大見得きったなー」

「うっ・・うあーーーっ」さらに強く踏みつけてくる。

「結局お前も人間好きですみたいなスタンスしといて結局信じてないじゃん。言ってないじゃん。びびってんじゃーん」

カマキは僕の首を掴み、砂場の方へ投げ飛ばす。

視界が暗い、体が重い、雄馬くんの顔を見ることができない。

「ほら僕、この糸だってコイツが体から出したんだよ。僕たちサファリング星人にはね、生まれつき生態能力っていうのがあってねっ、種族や遺伝によって備わっているものが違うんだ」

「せいたい能力?・・・」

「分かりやすく言うとね、コイツは糸を出す、僕は鎌を生成するってことだよ。

ねっ、同族くん」

「くっ・・・」もう力も入らない、喋りたくもない。ああっ、やっぱり言っておくべきだったのかな?・・隠すんじゃなかったな・・・

でもそれで受け入れてくれたのかな?肌の色が違うだけで、住んでいる国が違うだけで差別されるもんな・・・

「ねぇ僕、こんな大切なことも言わない人は良くないよね。ホント。

こんな奴はほっといて、

僕について来ない?魔法でオカシだっけ?食べさせてあげるからさっ・・」

「こんな奴じゃないもん・・・」

「ああん?」

「お兄ちゃんは優しい人だもん。ちょっと抜けてて、危なっかしいけど、

一人の僕のために一緒に学校行ってくれたり、心配してくれたりするんだーぁー」

「雄馬くん・・・」

「あーあっ。これだから頭の悪いガキは・・・。そこは『うん』とだけ言っておけば

命だけは助かったかもしれないのに」

「死にたくないっ・・・」

カマキは雄馬くんに向かって鎌を振り下ろそうとする。咄嗟にカマキの足首に糸をくくり付け、転ばせ、こちらに引き寄せる。

「コイツまだやるか?」

鎌を手で握り、取り押さえようとするが、なかなかうまくいかない。一瞬だけ銀色の石・・あの城で見たものが見えた。カマキに蹴り飛ばされまた倒れる。

「ホント、腹立つ・・しつこいぞっ。あっ、それは・・」

カマキが動揺して目を見開く。

僕は銀色の石のようなものをカマキから奪い取った。何で奪い取ったのかはわからない。なぜか惹かれるものがこれにはあった」

「雄馬くん、危ないからとりあえず遠くへ大人が居るところへ逃げて」

「うん・・」泣きながら返事をして僕の後ろを通って公園を出た。

「城でのこれの使っている様子やその反応を見るにこれが魔法を使うための道具だろ」

「ふんっ。魔法も知らなかったお前が使えこなせるわけないだろ。慣れや体力、魔法石チャージやインストールが必要なんだよ。バカがっ」

「ご丁寧にどうも・・・でも、バカだから分かないや。ものは試しだ・・・」

ビビリな僕はどこにもいなかった。ただコイツに殺されるわけにはいかないそんな気持ちが僕を突き動かしたのかもしれない。

僕は銀色の石を起動させた。






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