第6話 構わずに守る
どうすればいい?切るか?いやきっちゃダメだ。建物に飛び移るか?無理だ。
とりあえず糸の上の方に行って地面に叩き付けられない様にするしかない。
「よし。いや、間に合わな・・・い」
今朝ダイブした垣根に似ているものが目に付いたからか?賭けで再びダイブした。
顔から垣根に突っ込みまたお尻だけが出ている状態になった。今朝と一緒・・
足を地面に着け、地上にいることに安堵する。
そんな僕に子供が声をかけてきた。
「だいじょうぶ・・・?」
この声は・・・
「もしかして雄馬くん?」
「えっ、お兄ちゃん?」
「学校楽しかった?」
「あの・・笑い止まらないからお尻じゃなくてヘソか顔を向けて・・・」
「そうだね・・・」
垣根から顔を出し、木の枝や土を払いながら予想外の再会に胸が高鳴る。
「どうだった?初めての学校」
「緊張した。知らない人多くて疲れた」
「そっか・・。それにしても帰るの遅くない?」
ポケットからスマホを取り出し、時間を確認すると18時を過ぎている。
「学童行ってたの。パパもママも仕事だから。心配止まらないことがないように一人で帰ってたんだ」
「危ないんじゃない?大丈夫なの?」
「近いからへーき」
「雄馬くんは強いなー」雄馬くんと話していると癒されて、笑みが溢れてくる。
「その・・お兄ちゃんにおねが・・・」
突然音が聞こえてくる。どこだ?辺りを見回すが何もない。
いや、空だ・・・。「危ないっ・・・」
見上げるとこちらに黄色の物体がこちらに向かって来る。雄馬くんを抱えて守るようにして地面を転がりなんとか衝突を避けた。
地面に衝突したせいか黄色い物体から煙が舞う。なんとか起き上がり雄馬くんを守る
姿勢を崩さずにじっと目を凝らした先からさっきの金髪兵の、カマキの声がする。
「やらかしたーっ。『カクレール』の魔法を買っておきゃよかった」
「何この人?」雄馬くんが強張った声で僕に尋ねてくる。
「この人って・・この僕カマキ・リカバーを知らないだなんて」
前髪を上げながら不機嫌そうな顔をしたカマキは手を鎌に変化させ、黄色の空飛ぶ車
のようなものをじっくり舐め回すように見る。
潰れている部分を見るなり荒々しく鎌を振り下ろし、切断した。
「ほんと腹立つ。お前のせいで僕の相棒が台無しだ」
「お、お兄ちゃん・・・」雄馬くんが泣き出しそうな顔で僕を見る。
「大丈夫。お兄ちゃんが居るから」
「ほら、さっさと事務所に戻るぞ。そいつも連れて来い。僕の相棒の修理代
としてな」
「雄馬くんは関係ないでしょ」
「ああん?人間が魔法石の代わりになるか実験するのに使うだろ?
モルモットとして使うかもしれないけどっ」
その言葉を聞いて自分が同族とは思いたくなくなったと同時にカマキの自分勝手さに怒りが湧いた。
「それは本気で言ってるのか?」
「こっちのセリフだよ。関係ないって・・・、何で人間の味方してんの?」
「この町に住んでいる人は、行く場所がない僕をサファリング星に帰れない僕を
受け入れてくれた。差別しないで接してくれた。たくさんの思い出を作ったくれた。
そんな人たちをモルモットって・・・ふざけるな」
「頭悪いなお前。まぁ、『スピーク』も使わず、運よく人間と話せて、一緒の小屋で
生活してれば愛着が湧いて、脳みそ腐るもんなのかな?」
「スピークって・・人間と話せる魔法もあるのか?じゃ何で人の事をモルモットだ何て言えるんだよ。話すことができるならそんな事しようだなんて思えないだろ」
「あーもう、らちがあかないわ。イグア団チョーには生け取りって言われてたけど、
もうムカつくから殺すわ」
そう言ったカマキは生成した鎌を構えながらこちらに向かって走ってくる。
咄嗟に雄馬くんを抱き抱えて逃げる。
糸で上り下りしたせいで腕が筋肉痛で痛いけど、それを我慢して必死に逃げる。
なるべく曲がるようにして撒き、公園の遊具のドームの中に隠れる。
「怖いっ・・・」
怯えている雄馬くんの頭を撫でる。そろそろ大丈夫かと思った矢先に外から鎌が引きずられる不快な音がする。
「カクレールを使ってなくてよかったよ。僕の相棒の件といい、お前には散々遊ばれたからなー。そのガキの差し入れとお前の死でトントンだ」
目を閉じ、深呼吸する。雄馬くんに任してという意味で自分の胸を叩いて見せてから
ドームを出る。
「出たな糸野郎。ぶっ殺してやるよ」目の前にはメッキが剥がれてとても優秀とは思えないカマキの姿があった。
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