第3話 城のお出迎え

「何をそんなに急いでいるの?あっ、分かった。和樹のことが心配なんでしょ?

 今日なぜか休みだっったもんねー」

「別に心配はしてないよ。中学校の時から時々サボったりすることもあったし」

配られた教科者をカバンに無理やり押し込みながらそう答えた僕を、未來がニマニマ

笑っている。

「LINGで連絡も来てたし、ほら」

「本当だ。何で未來だけに連絡を?」

「カイってさ昔から真面目すぎるところがあるからなんか言われると思ったんじゃ ない?」

「別に何も言わないよ。それに中学校の僕とは違う。僕は変わったんだ」

「うんうん。変わった、変わった。無駄に凝ってるヘアースタイル。

少し着こなしてる感を演出するための緩めにしているネクタイ、そして俺、お前達とは違うんだぜと言わんばかりの斜に構えたツラ」

「うるさいなー。どんな格好しようが僕の自由でしょ。別に未來に見てもらうために

してるわけじゃないんだからさ」

未來は少し視線をそらして言う。

「じゃ、誰に向けてやってるの?私はてっきり、女の子にモテた・・・」

「あー違う違う。そんなんじゃないよー。さ、さようならーー」

そう言って僕は教室を慌てて出た。

「また・・自分をからかっちゃった・・・」カイの後ろ姿を見つめながら

霧谷未來は誰にも聞こえない小さな声でつぶやいた。

下校中、みんなが初日の雰囲気を噛みしめながら下校している中、僕はそれを突っ切る様にして学校を出た。

あの城を見かけるまでは僕もみんなと同じように友達と和樹や未來とくだらない事を話しながら変えるはずだった。

今この瞬間までは、サファリング星やお父さんさんのことで頭がいっぱいだったのに

どうしてだろう?一緒に帰ればよかったとも思っている。

「着いた・・・」

城が浮いている真下の場所まで来た。川沿いのせいか少し陽が落ち、辺りは橙色に染まって輝いている。

あの日、この星に来た時と同じ情景に見える。

深呼吸をして、城に向かって手をかざす。

指先から糸を出し、城まで到達したことを確認する。

川に落ちないように設置されている手すりに糸をくくり付け、登り始めた。

着々と登っていく。これくらいは大したことじゃない。

ここでの五年間で僕は人間とサファリング星人には力の差があることを理解している。みんな上り棒で苦労してたし。

足を引っ掛け、登り切った。城は近くで見てみると案外小さい。

特におしゃれな飾りも無く、質素だ。

扉に手を掛け、ゆっくり開くと、中は広い。

足を踏み入れると、突然目の前に銀色の甲冑を身に纏った一人の兵が現れ、槍を僕の首筋に掲げ、問いかける。

「何者だ?」そう言って僕を睨め付ける。

「突然すみません」

「お前、言葉がわかるのか?」

「はい。僕はサファリング星人ですから」

「そうか・・」兵はポケベルサイズの綺麗な銀色の石の様なものを取り出し、耳に当てる。

電話をしているのか?石を耳に当てたまま話している。

『僕を城に入れてもいいか?』と。

石をしまった兵は僕に付いてこいと言った。

僕は兵の後ろをついて行き、くねくね曲がっている階段を登る。

そして、いかにもボスが居そうな広間に連れてこられた。

ここまでの道のりと違い、少しだけおしゃれな装飾がある。

青いカーペットが敷かれ、そんなところに作らなくてもいいのにと感じる高さが無い階段。左右に鏡が設置されている。

そして極め付けは体育館のステージの様なところに肘掛けがある椅子が置いてある。

そしてステージの脇から金色の甲冑を身に纏ったサファリング星人が現れた。

そして、頭部の甲冑を外すと、40代ぐらいの気の良い雰囲気のおじさんだった。

そして、仕切り直す様に手を叩きこう言った。

「ようこそ。我がサウルス調査団第二部隊事務所へ」

「事務所?ここは事務所なんですか?」

「ああ、そうさ。ここはサウルス直属の球形の星『地球』を調べる為にプテーラ首領直々に組織された調査チームさ。それにしてもまさか地球にサファリング星人がすでに居たとは、出会いとは分からないものだ」

流石に僕の救助の為ではなかったか・・・。でも気の良さそうな人だ。

さっきの兵も部屋から出て行ったみたいだし、警戒はされてないのか?

ここはいっその事正直に聞いてみよう。

「自分で言うのも何ですけど、疑っていないんですか?僕のこと・・・」






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