第2話 お迎えはもう少し後で

「あれは・・・」

空を見上げながらサファリング星のニュース映像で見た覚えのある城を見て震えてくる。

「どうしたんだよ。急に笑顔になって。負けたばっかだろ」

和樹には見えていない?・・・もしかして僕を助けに、迎えに来てくれたのか・・・

高校と同じ方向か・・・。とりあえず行かなきゃ。

「ごめん、忘れ物しちゃった。先に行ってて」

理由をつけ、僕は城が浮かんでいる真下の場所に行くために走った。

「まったく、未來といいカイといい本当に落ち着きが・・・・あれだな。

うん?さっきまで小学生やサラリーマンがたくさん歩いてたのに、急に人通り減ったな」

そう言った瞬間、新品の通学カバンの留め具がアスファルトと擦れる音がした。

その音を聞いた人は誰もいなかった。


正直もう戻れないと思っていた。お父さんにも会いたいし、友達にも地球での話をいっぱい聞かせたい。そんな期待が原因なのかいつもより足が軽く感じる。

普段は周りの人に不審に思われないように使わないけど、早く行きたい。

あの城に。久しぶりに使うか。僕は指先から糸を出して電柱にくっ付けて、

サファリング星のニュースで見た羽部隊の様に糸にぶら下がって移動する。

1本の糸で移動できる距離は50メートル程だけど普通に走るよりは速い。

移動に成功し、次の糸を出し、同じようにまたぶら下がり移動しようとすると、

曲がり角から黄色い物体が視界に入る。

「小学生?ごめん、どいてーーー」

間一髪で壁を蹴って進路を変えることができたが垣根にダイブ。

小学生は恐る恐るこちらに近づいてポンポンと触る。

「だいじょ・・ぶ・・・・?」

「うん。大丈夫だよ」

「そんなんで言われても、心配止まらないよ。人と話す時はヘソを向けるって先生言ってた」

「そうだね・・・」僕は垣根に顔を突っ込んで尻を向けながらそう言った。

「一人で登校してるの?」

「うん。パパもママも仕事だから。まだ友達できてないし」

「そうだよね。まだ初日だからね」

「ぼく、パパの仕事で引っ越して来たから、友達いないんだ」

ランドセルに付いていた手作りの御守りが目についた。

御守りだけじゃない。防犯ブザーや黄色い帽子にも名前が書かれている。

親が書いてくれたのだろう。

「もしよかったら、一緒に学校まで行かない?」

気づいたら、そんな言葉をかけていた。

「へぇ〜お父さん警察官なんだ」

「うん。パパはかっこいいんだよ。いつも帰ってくるの遅くて朝しか会えないけど」

「ぼくもパパみたいにかっこいい警察官にはなれないかもしれないけど、

 人を助ける人になりたいな〜」

「志が高くていいね。僕には雄馬くんみたいに立派な夢はないからすごいと思うよ」

「そうかな?・・・」

「そうだよ」

そんな事を話しているとあっという間に小学校に着いた。

「ありがとう、お兄ちゃん」

「どういたしまして。学校楽しんでねー」

そう告げると僕は城に向かって走り出そうとしたが、

どうしよう、時間的に城に行くと遅刻だ。無断欠席したら裕二さんや奈央さん優奈にも心配させてしまうし、放課後にしよう。

そう決めた瞬間、背中を叩かれた。

「あっ、また拳を作って見つめて頷いてるー。バトル漫画の見過ぎだってー。

 覚悟決めシーンに憧れてるでしょ」

「未來、なんでここに?遅れるんじゃ、、、」

「遅れるって言っても流石に遅刻まではしないよ。初日ですし」

「カイこそ、和樹と先に行くんじゃなかったの?」

「いや、まぁ、色々あって・・・」

「ふ〜ん。色々ね。男の子と仲良く話して登校じゃなさそうね」

「えっ、まさか、つけてたな」

「何の事でしょう?」

「このストーカー、不審者、えっと・・・忍者ー」

「いやいや、今時、見知らぬ小学生と登校してるのも不審者でしょ」

「うっ・・・」

「今日の口論も私の勝ち。どんまいストーカー君」

「うっ・・・」

心にちくちく言葉が刺さる。つらい。敗北に悔しんでいると、

突然、背中に寒気が走り、反射的に振り返った。

誰もいなかった。

「もう誰も付いてきてないってー。カイの後をつける物好きなんてそうそう居ないって」

「そこまで言わなくてもいいだろーーー」

そう言って僕と未來は学校に向かった。











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