第12話

私は悪魔の仮装をした男に肩を抱かれ、ほぼ引きずられる形でお店を出た。


階段なんか降りられるはずもなく、男に片手で抱えられ降りていく。



「あの、早いってどういうこと?」


男はなにも答えず階段を降り切ると

お店のすぐ横の狭く薄暗い路地に入り、突き当たりまで進むと止まった。


彼の背中越しに満月が私たちを照らす。


道路からはギリギリ見えていない距離だろう。


私は背中の壁にもたれ、かろうじて立っている状態。




「…俺が怖いか?」


冷め切った声で投げやりに問われ、ゆっくりと男の顔を見た。



カラーコンタクトをしているのか真っ赤な瞳が私を見つめる。


禍々しいような赤い瞳。

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