3#魔道士に頼むドラゴン

 「はい!如何にも通りすがりの魔道士ですよ。

 ドラゴンさん。こんなに泣いているので、何かお力になる事がありましたら何なりと、この魔道士めにお聞かせ下さい。」


 「ホント?!何でも?!」


 それを聞いたドラゴンのパルは、思わず身を乗り出して魔道士にその大きな顔を近づけた。


 「まあまあ!落ち着いて!!」


 魔道士は、興奮で目を爛々と輝かせて大きな鼻の孔から生暖かい鼻息を吹き出すドラゴンを冷や汗かきながら宥めて言った。


 「で、困りごとは?」


 「空を飛びたい!!!!!」


 ドラゴンのパルはそう言うの、目を期待にキラキラと輝かせた。


 「なら、君・・・ドラゴンを空に飛ばせてあげよう!!」


 「やったーーー!!ありがとう!!魔道士さん!!」


 ドラゴンのパルは、思いっきり万歳して飛び上がって喜んだ。


 「はい!飛んだ!!効いただろ。わしの魔法!!」


 「え?」ドラゴンのパルは思わず唖然とした。


 「飛んだって!!これで飛んだ事にするの?!ねぇ!!俺の望んでる事は!!この空を飛ぶ事だよ!!」


 ドラゴンのパルは、思わず魔道士に食って掛かった。 


 「冗談だよ冗談!!」


 魔道士は、余りにものしかめっ面にを被りりかかるドラゴンの巨体にたじろいだ。


 「じゃあ、君を空高く飛ぶ身体にしてあげよう。」


 「早く!!早く!!俺、空を自由に飛びたいの!!」


 ドラゴンのパルは期待に胸を膨らませる中、魔道士は地面に魔法陣を書いてそこにドラゴンのパルを立たせた。


 「ではいくぞ!!」


 魔道士はそう言うと、何やらゴニョゴニョと呪文を唱えた。


 すると・・・



 ぷぅぅぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!


 

 と、まるでゴム風船にヘリウムガスを入れる様な音を立てて、ドラゴンのパルの身体がどんどんどんどん大きく膨らみはじめた。


 「ちょっと!!ちょっと!!俺は空を飛びたいと言ったけど・・・」 


 ドラゴンのパルは、耳を塞ぎながら魔道士に訴えた。


 「だぁかぁら!!ドラゴンさんは空を飛びたいんだろ?!」


 「ええっ?!俺の身体パンクしちゃう!!」


 まるで巨大なゴム毬みたいにまんまるに膨らんだドラゴンのパルは、遂に宙に浮いて空高くふわふわと飛んでいった。


 「ドラゴンさーーん!!じゃあ、待望の空の旅に行ってらっしゃーーーい!!」


 「はーーーい!!行ってきまーす・・・って!!まいいか。」

 

 巨大な風船になったドラゴンのパルは、魔道士も、街も、眼下から段々小さく見えてやがて目の前に見渡す程の大空の上空に浮かんでいった。

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