4#風船ドラゴン空を行く
ふわふわ・・・ふうわり・・・
魔道士の魔法でゴム風船のようにパンパンに膨らんで飛んでいるドラゴンのパルは、待望の大空を自由に飛びまわる・・・訳ではなく、
空を飛ぶのに風任せ。手足や尻尾をジタバタ搔いて何とか方向転換しようも、パンパンに膨らんだ身体が仇になってなかなか方向転換出来なかった。
「もしかしたら、炎の吐息でスピード出せるかも・・・」
と思っても、もしかしたらその炎の吐息で身体の空気が抜けて吹っ飛んで、地面に墜落しそうで怖くて息を吹くのが怖くなった。
「あーー・・・魔道士の奴、俺は翼を大きくして空を飛ばすんじゃなくて何で俺自体を風船みたいに膨らませて飛ばすとか、何考えてんだろ・・・。
ま、空を飛んでいるのは変わりないけどさ・・・ 」
「あ、風船が飛んでる!!」
「風船かと思ったら、あの羽無しドラゴンじゃねぇか!!」
「あれ〜?羽無しドラゴンちゃん何で風船になってるの?」
「何だか分からないけど、この風船割っちゃおうぜ?!」
「割っちゃえ!割っちゃえ!」
突然、向こうでたまたま飛んでいたドラゴン達やワイバーン達が、奇妙な風船ドラゴンのパルを見つけて、わらわらと群がってきた。
「やば!!俺を馬鹿にしてる奴らに見つかった!!」
慌てた風船ドラゴンのパルは青ざめて、何とか逃げようも、パルは風船。
もがこうも全然進まず焦りまくった。
「ほーーーら!!割っちゃうぞーーー!!」「きゃはははは!!割っちゃうぞーー!!」
迫ってくるドラゴン達やワイバーン達は其々、牙を剥いて爪を立てて笑いながら追いかけてきたので、風船ドラゴンのパルは血相を変えて藻掻いて藻掻いて藻掻きまくって、逃れようと必死になった。
更に困った事が起きていた。
「お、俺の身体が萎んでいってる!?」
そうなのだ。風船ドラゴンのパルの身体の中から空気が抜けてどんどんどんどん萎んでしまったのだ。
風船ドラゴンのパルは、思いっきり息を吸い込んで身体を膨らまそうも、鼻の孔から空気が漏れてなかなか膨らまなかった。
「ああああ!!膨らめ!!膨らめ!!俺!!俺は風船なんだ!!俺風船膨らめ!!
ん・・・?」
風船ドラゴンのパルは、ふと気付いた。
「何で身体は萎んでいくのに、身体は浮いてるんだ?」
パルは振り向いて驚いた。
「翼!!大きな翼が生えている!!」
ばさっ!!
ドラゴンのパルは、翼の羽音一発!
そうなのだ。あの魔道士の魔力は、願えば叶う魔力。
身体の空気は背中の小さな翼へ濁流して大きく膨らみ、立派で逞しい翼になったのだ。
そして今自らの翼で遥かに拡がる、この大空の中を飛んでいるのだ。
ドラゴンのパルは感激した。
あこがれだった空の真っ只中に居る。
止めどなく流れる、嬉し涙。
「さあ、今から何処へ行こうかな・・・」
〜風船ドラゴン空を飛ぶ〜
〜fin〜
風船ドラゴン空を飛ぶ アほリ @ahori1970
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