第16話<SS>My answer is “Yes”
久慈真理恵からもうすぐ真理恵・ホーガン・田辺になる。旦那様になる聖・エリック・ホーガン・田辺のお嫁さんになる。
聖くんは、保育園からの友達でアイドルだった。私は、両親共に教師、彼は、両親が旅館を営んでいた。同じ保育園の入園式で初めて会った聖くんは、お人形さんのみたいだった。しかし、リーダー的存在で、いたずら好きな男の子で、みんなのアイドル的存在だった。
私は、彼を遠くから見つめるだけで充分で、話すなんてもっての外だった。それが、従姉の美紗子ちゃんが、彼の従兄の涼平さんと中学生からお付き合いしてたので、一度、聖くんの旅館雲海荘に連れて行ってもらった。
その日は、結婚式があると言うので、花嫁さんを見せてもらう為に旅館に行った。美紗子姉ちゃんは、お手伝いするからここで待っていてと言った。トイレに行こうとしたらさくらの木が、満開でそれに見惚れて庭に降りた。暫くして気がついたら庭の中で迷子になってしまった。心細くて、半泣きで広いお庭にいた。その時に、聖くんが、やってきた。
「どうしたの?何故ここにいる?」
「み、みさ、美紗子姉ちゃんが、お嫁さんを見れるからって、それでおトイレに行こうと思ったらさくらが綺麗で」
「あ、あぁそれで庭に降りて、迷子になったんだ」
「うん」
「それならもっと良い所があるよ、おいで」
「うん」
聖くんは、そう言って私の手を引いて庭が一望できる所へ連れて行ってくれた。
「ここは特等席だよ」
「ほんとだ」
「お客様に近いから声は出したら、ダメだよ」
「うん」
「まだ、お客様が来ていないなぁ」
「もう終わった?」
「まだ終わっていない筈だけど」
「トイレはない?今のうちにしておこう」
聖くんは、ずーっと手を繋いでくれた。私は、ドキドキしてたけど嬉しくて楽しかった。
「わぁ、お客様が入って来た。今日のお嫁さんのお父さんは僧侶で、家を出ているから、結婚式はここでしても見にきてくるかどうかわからないって言ってた」
「そうなんだ、だけど見にきて欲しいね」
「そうだね」
「あっ、アレお坊様?」
「ほんとだ、俺行ってくる」
聖くんは、すーっと寄っていって声をかけた。
「お坊様、良かったらここで、休みませんか?」
「大丈夫だよ」
「お祖母ちゃんが、ここにって言ってた」
「大女将が…」
「うん」
「わかった」
「どうぞ、特等席です」
聖くんが、連れて行ったのは庭の少し奥まった東屋のところだった。
聖くんが、合図を送ると、暗かった庭が明るくなった。宴席にいた人が、庭の方を向いていた。
お婿さんが前で、後ろからお嫁さん、その手を引いて美紗子姉ちゃんが、庭に降りた。最後に涼平さんが御神酒を持って庭に降りる。すると、お坊様は、東屋から逃げようとした。お坊様の後ろに聖くんのお父さんが、立っていてお坊様に一言言った。お坊様は、仕方なくっていう様子で、お嫁さんを見つめていた。
それから、結婚式が始まった。とっても良い結婚式だと初めて結婚式を見たのにそう思った。聖くんは、隣に立って
「良く見えた?」
「素敵だった」
「僕も思う」
「私も、あんな風にお嫁さんになりたい」
「ふーん、僕が君をお嫁さんにしてあげる」
「ほんと!嬉しい、約束」
指切りした後でも、保育園では何もなかったけどたまにお互いの目が合うと笑ってくれた。
「ただいま、どうした?」
「思い出していた」
「何を?」
「ここで初めてお嫁さんを見た時の事」
「あぁ、だから結婚式は春が良いって言っていたんだ」
「覚えている?」
「勿論、初めての君へのプロポーズ、僕は何回でもプロポーズするから」
「聖ったら」
「来週は、親父たちも戻ってくる。そうしたら、君は僕のお嫁さんだ」
「うん」
「Will you marry me?」
「My answer is “Yes”」
YES、MY better half 風鈴 @Fu-rin00
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