第12話
健作と2人で、夕食を食べて、コーヒーを飲んでいる時に、思い切って健作に言った。
「健作、あの時は本当にごめん、後先も考えずに自分の気持ちだけを押し付けて、あの後あなたが、どんなに忙しくて大変になるのにわがままだったと思う」
私は、一気に言った。
「まぁ、あの時、君にちゃんと説明してあげれれば良かったと、今では思う。だけど、僕は今でも義兄さんと母さんを合祀した事に悔いはない。義兄さんは本当に優しい人だった。僕にも兄貴にもいつも優しく接してくれる人だった。本当は、彼が旅館を継ぐはずだった、それぐらいあの旅館を大切にしてくれていた。だけど、F県の叔父さんは、自分は僧侶の修行をしたくないが、寺に入るお金は欲しかったらしい。葬式の後に寺の本山の僧侶の方が来られて、読経された後に言っていた。義兄さんの奥さんもそうだったみたいで、義兄さんが少し心が不安定なので法事を本山の寺に頼んで取り仕切ってもらっていた。それで、収入が減ったから家を出ようとして、焦ってブレーキとアクセルを間違えて亡くなったそうだ。寺を食いものにしていた叔父さんは、新しい住職が派遣されて、寺から追い出されたと聞いた」
「因果応報だったかしら」
「そうだな、良く覚えていたなぁ」
「お義母さんが、良く言っていたから、私は、お義母さんが大好きだから今、何人かの部下がいるけど、お義母さんから教えてもらった話は、身に染みているからいつも思い出すもの」
「本当に、妬くほど母さんの事が好きだね」
「私からしたら、仏様みたいだった。穏やかで、慎ましい方だもの、私とは正反対」
「母さんもケイトをすごく可愛いがっていたと思うよ。義姉さんが、君が居なくなって一言、あんなに慕っていたから許せないと思ったんだね、もう一週間だけ我慢してくれたら良かったのにねって」
「本当に、この頃気持ちの浮き沈みが大きくて産婦人科医のクリニックに行っているの、彼女は心療内科医でもあるから色々と話を聞いてもらった。それで、色々な心の整理がついたの、忘れようとしても忘れられないことがあるからそれを一つ一つ片付けてこの頃やっと心に余裕ができた。それでね、それ、でね」
健作に見つめられて、顔が真っ赤になるが、言わないと後悔するから
「健作に会いたいって思って、カルフォルニアボールドホテルのリニューアルが済んだら会いに行こうと思っていた」
「ありがとう、ケイト、こんな優柔不断な俺に会いに来ようと思ってくれて、俺はパスポートを何回も申請していたのにここに来れなかった。ここに来て、君が誰かのものになっていたらと思うと怖くて来れなかった。今回、聖が来てくれて、背中を押してくれなかったら来れないほど小心者だ」
「何人かの人から、プロポーズは受けたけど、心が動かないの、あの時みたいに心が動かない」
「僕は、君を好きだ、君以外を愛せない」
「私も、あなただけが好きで、愛しているの」
健作の唇が私に触れた瞬間、彼に抱きしめられて、愛されていくことが自然だった。その夜は、初夜以上にウブな2人が、ベッドの中にいた。
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