第10話
数日後、リリアの退職を発表した。後任のキャロルは、すごく泣きそうだが、大丈夫彼女はしっかりとしているからと思いながら、久しぶりに産婦人科医院に行く。
「お久しぶりです、ドクター」
「本当にお久しぶり、ケイト」
「一度キャンセルしているわね、何かあった?」
「私の秘書が結婚で仕事を退職するので、新しい秘書がその日に仕事を入れてしまって、申し訳ありません」
「良いわよ、キャンセルもドタキャンじゃなかったし、結構、この時期の人は浮き沈みが大きくてドタキャンもあるから、そうなると心的に問題がある場合もあるから少し心配していた」
「そうなんですね。体調は大丈夫です」
「新しい秘書はどう?」
「前のリリアは、私が、ホテルに就職してリネン室に配属された時からの友人で、年齢的に近くて息子の友人のお母さんだったので、公私にわたり世話をしてもらっていたから、今の秘書は、若い人なので、やる気はありますが少し空回りしている所もあるので、今鍛えています」
「そうね、今時の若い者って言葉は、歴史的には古くから使われているって知っている?」
「はい、私も彼女が今経験している時期があったと思って耐えています。ここに来てなかったら、怒ってばかりになっていたと思います」
「よろしい、気持ちがそう思えると言うのは良い傾向よ。その他は何か?」
「もうすぐに私、誕生日なんです。もう誕生日会なんて嫌なんですが、伯父が、お祖父様が楽しみにしていると言って毎年恒例行事なんです」
「素敵ね、何か不味い事があるのかしら」
「私としては今回で終わりたいと思っていて、伯父から勧められている結婚も断るつもりなんです」
「今年で辞める理由は?」
「カルフォルニアボールドホテルの改装、リニューアルオープンを成功したら、ゆっくりお休みをする為にホテルの退職を考えていて、そのあとは世界中を旅したいと思っています」
「素敵ね、前向きに人生に取り組む事は簡単ではないの失敗は付きものよ、だから成功した時に喜びが多くなるんだと思うの、頑張ってほしい。次の診察だけど、1カ月後に誕生日会の事等を聞かせて」
「はい、ありがとうございます」
クリニックを出て、メールを確認すると、リックが乗る飛行機の到着日時を知らせてくれる。誕生日会にはニューヨークに来てくれるとあって、飛行場に迎えに行くと返事をした。
誕生日会の3日前にオーナーが、カルフォルニアから出て来た。彼は、殆どカルフォルニアボールドホテルの高層棟の3階のオーナー室かワシントンボールドホテルの方にいるのでニューヨークに来るのは珍しい。私は、一応アポイントを取ってから会いにいった。
「こんにちは、お久しぶりですね。伯父様」
「久しぶりだけど、先週カルフォルニアボールドホテルの方に来ていたのを見かけた」
「声を掛けてくれれば良いのに」
「忙しく動いている姪を見ていた」
「今日は、改まってアポイントを秘書を通じてくれたけど、問題が出たのか?」
「カルフォルニアの改装は予定通りに終わって、10月の初めのリニューアルオープンも大丈夫だとは思います」
「それは良かった」
「実は、個人的なお願いですが、ホテルを退職したいと思っています」
「ケイト、退職だって、そんな話は聞きたくない」
伯父は、いつに無く興奮して怒り出した。
「オーナー、聞いてください、私、プレ更年期の症状で病院に通ってます。カウセリングを受けて、投薬もしています。一度ゆっくりと休みを取りたいと思っています」
「お前まで、わかった」
伯父は切羽詰まった声と泣きそうな顔をしていた。
「伯父さ、ま?」
「わかった、出て行ってくれ」
ケイトは、伯父の声を荒げるのを初めて聞いた。今まで私に声を荒げて話した事もない伯父の急変な態度が気になり、自分の部屋に戻るとその違和感が、段々大きくなってきた。私は直ぐに、キャロルを呼ぶ。
「キャロル、オーナーのここ2、3日の行動予定を調べて、そして、ジャックを呼んで」
「かしこまりました」
暫くして、広報室のリーダーのジャックが来た。
「あなたが持っているネタを出しなさい」
「それは室長として?オーナーとして?大学のクィーンとしてですか?」
「クィーンとしてが一番強そうね」
「それは、この世にまだ5人しかいませんから」
「そうか、それじゃ、クィーンとしてセドリックオーナーの事を言って」
「うむ、俺も真偽のほどはわからないが、セドリックオーナーは、危機にあると推測されます。それは、セドリックオーナーの長男がギャンブルで大損したと言う噂があります」
「あいつね、従兄のモーリスが、どれぐらいなの?」
「そこまではまだ掴めていません」
「早急に調べて今日中に」
「わかりました」
「私は、今から飛行場にリックを迎えに行く、今日は戻らない」
「はい、明日の朝には確証を持ってきます」
「セドリックオーナーの2、3日のスケジュールはキャロルに言っているから、それも精査しておいて、不測の事態が在れば連絡しても良いから、よろしくお願いします」
ジャックは部屋の扉を開けて見送ってくれた。
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