第9話

 リリアは、続けて話し出す。

「ボブとリックの出会いは、私がホテルのリネン係で、あなたと会う少し前ぐらいだと思うわ、彼は、日本から戻って英会話に少しブランクがあったのをあなたの親戚や同級生が揶揄っていたので庇ってやったってその頃言っていた。リックと一緒に遊んで言葉や学校の事等を色々と教えてあげていた。その他の勉強はあいつは全然ダメだけだから反対に教えてもらった方が多いと思うけど」

 ケイトは、何も知らずに今までリックを傷つけていたと思うと涙が溢れてきた。

「ケイト、リックは別にあなたを責めてはいない。だからあなたが、神経すり減らしてカルフォルニアボールドホテルの仕事する必要はないと思う」

「だけど、私はリックがホテルに入るって聞いたから」

「誰から?」

「カークから、コンシェルジュに採用が決まっているって聞いた」

「私もその噂は聞いたけど、ボブは絶対にないって言い切るのよ」

「そうなの?本人はジョージと一緒に立ち上げた会社を本格稼働するのに誘われていて悩んでいるって今年の初めに聞いたのに、カークからそう聞いて、やっぱりホテルにしたのかと思っていたら、急に日本にジョージ達と色んなことを体験するって言って日本に行くから揺れているんだろうと思っていた」

「おかしいわね、一度ちゃんと話し合いした方が良いと思う」

「わかった。リリア、今迄ありがとう、あなたがいなくなったら私大丈夫かしら、リックとは彼が、日本から戻ったら話し合いをする」

「そうね、そうすれば誤解も解けるんじゃない。まだまだ、カウンセリングは続くんでしょ」

「えぇ、更年期じゃないけど、キャリアを持つといろいろとプレッシャーや悩みも出てくると更年期に似た症状が出るらしい、だから、薬を貰っているけど漢方薬で軽く精神安定させるサプリメント剤らしい。だけど、後2か月も切っているカルフォルニアボールドホテルの件は、最後までするよ。あのホテルは我が家の家も同然だし、実家が、ホテルの敷地から撤退する時までは見届けたいって思っている」

 デザートになって、トニーとボブが厨房から出てきた。

「トニー、結婚おめでとう、ボブも辞めたの?」

大声で言って、握手する。

「もう少し、ホテルで修行させたかったが、俺が、ひっぱ叩いてホテルの皿洗いから修行させただろう、それをあまり良く思わない人もいるから、ここも俺ひとりじゃ大変だから」

「そう、家族になってレストランを盛り立てて頑張って欲しい」

「片付けがあるから」

 そう言って2人は、厨房に戻った。

「ケイト、もう少し良い」

「大丈夫だよ」

「もう一度聞くけど、カーク支配人の件は断るの?」

「多分、断るわ、今の話を聞いて彼に都合が良いように私に吹き込んでいるように思えるから、少し引いて考えるけど、やっぱり彼の事は嫌いじゃないけど友人以上にはならないかなぁ」

「これはね、一部の人の情報なんだけど、カーク支配人が、ケイトと結婚したら、カルフォルニアボールドホテルの総支配人になれるって言う話なの、だから結婚を申し込んだって、ケイトを取り込むだけでなくリックも取り込む事ができるから一石二鳥だと言っていたって」

「わかった。そんな事を言っているなんて頭に来る。私とリックは別だよ。私もホテルに就職したのはホテルで働く事が好きだからよ。そんな話だったら、考える余地もないわ。また、何か情報有れば回してくれる?」

「もちろん、だけど気をつけてね。あのタイプ根に持つから」

「彼の実力だったら、私と結婚しなくても、あと数年後にはカルフォルニアの支配人になれると思う。何か焦るような事があるのかしら」

 リリアとトニーとボブに見送られて車で家に戻った。

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